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アトリエの恋

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 その絵具が二人を引き寄せたのが、ほぼ一年前だった。それを忘れる筈がなかった。
 硫黄のかおりが濃く漂う温泉だった。紅葉に囲まれた露天風呂は広く、そこが貸切状態だった。阿坂は深いところを探して泳いだ。林が泳ぎの名手だったことを思い出した。
プールつきの銭湯で競争したことがあったが、まるで比較にならない速さで、彼は泳いでいた。
 畳敷きの休憩室があったのでそこで横になり、居眠りをしているとさやかに起こされた。
「もうお昼よ。また作ってきちゃった」
「今日も?ありがたいね。愉しみだね」
「どこか景色がいいところで食べましょう」
 日帰り温泉施設を出てから一時間程山の中を走りまわり、固定のテーブルとイスがある展望台を発見した。
「一緒に登山をしたときを思い出したわ」
「あそこにもこんな木のテーブルとイスがあったね」
 蒼い空に白い雲が浮かんでいる。上空高く、トビが数羽旋回している。
「あのときは景色が何も見えなかったわ」
 今は遠い街並みや輝く大きな川を望むことができ、紅葉が美しい多くの山々がそれらをとり囲んでいた。そこには気持ちの良い陽射しがあり、爽やかな風が吹いていた。
「人生という旅に悪いことは少ないね。そう思わないかな」
「そうよね。いいこともたくさんあるものね」
作品名:アトリエの恋 作家名:マナーモード