アトリエの恋
「愛さえあれば、幸せになれる。それだけを信じて、頑張ろうよ」
阿坂も笑顔のまま云った。
「ちゃんとプロポーズしてくれないのね」
「何度もプロポーズしてるんだけど、通じてないの?」
「じゃあ、父と姉に会ってくれる?」
「オーケー。さやかさんにも、こっちの両親と姉に、会ってもらうよ」
「カドミウムレッドの夕陽が始まったわ」
「本当だ。今度絵具を買うときは、割り勘にする?」
「お互いにプレゼントすることにしたいわ」
「その必要はないのかも知れない……しまった!スケッチするのを忘れた」
空の雲も、湖面も、カドミウムレッドに染められている。そして、二人の心の中も同じ色に染められていた。
了