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悪魔の証明

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しかもmixiと違って、連投することもあったし、更新率が高かった。
ゆえに、自分の投稿は見られていないだろうという目算が生じやすかった。

Mは普段出さない兵器をそこで惜しげもなく、使用した。
それはMにとったら不注意な行為だったのかもしれない。
Mの過ちが俺にここまでの損害を与えた。
俺はMがTwitterをやっていたのは知らなかった。
仮に知っていても彼女をフォローすることはありえなかった。
詳しく述べるつもりはないが、それぞれのSNSの使い方や投稿の種類はそれぞれ違っていた。
Mはその意味で俺のTwitterのTLにふさわしくなかった。

しかし、共通の友人がたまたまいて、彼は俺とフォローしあっていたし、彼はMとフォローしあっていた。
俺はそこでMを発見した。
そこで興味からMの投稿を見たのだ(なぜMは鍵をつけないのか理解できなかったが)。

Mはその場で、彼とリプライを飛ばしあっていた。
「なんかね、今はTが必要なの(>_<)」
その男はTというらしかったらしいが、その会話を見ていると、Mは当時俺と付き合っていた俺とほとんど同じ接し方をしていた。
その会話からは彼のステータスや地位は知ることはできなかったが、為人は俺に似ていた。
テキトーなところやMが病んでいる時は優しい対応をするところなど。

俺を損害せしめたのはMが依然として幸せであることが分かったことである。
俺は悟ったのだ。
Mは今後も幸福であると。

成るほど、Mの幸福を憎むとは俺もあきれたやつだ。
人の不幸を願う人間がそもそも幸福になれるはずはないだろう(つまり俺はMより上級になれるはずがない)。
そのようなことは、俺は知っている。
理屈も通っているし、反対はしない。
しかし、人間には理屈や理性で保てない側面があるのだ(とはいえ、Mに今のところ実際の被害を与えていない点で俺は理性的な人間だった。)。

 Twitterでは俺は彼女となんの接点もなかったので、そのまま画面を閉じた。
しかし、今後俺はどうすればいいのだろうか。
このままでは俺は自己を保てずに腐ってしまうだろう。

考えた策は、Mへの最後通牒だった。
Mに対して実際的な行動を起こすことだった。
しかも、俺は一種の破壊的な衝動を胸に秘めていたので、最大の悪を犯すことを望んだ。

一瞬は、実際にMを破壊することが脳裏をよぎったが、それではMが可哀そうだったし、それくらいの良心はあった。
しかも、その行為によって今後俺がこの社会で生きられなくなるのを恐れた。

さらに、俺がかねてからMに対して抱いていた報復心も含めてMを身体的に、または物理的に傷つけることは望まなかった。
ただ、精神的に傷を与えたかった。
それも重症にならない程度の。

精神的に軽い傷を与えることで、俺の意地を永久に見せつけられた。
俺は育児がなかったかもしれない。
このような場面でも俺はMを最小限にしか傷つけなかった。
過去の人物たちは、自己のためになら手段を選ばなかった。
ヒットラーだって、自己や自民族の内面を守るために、あれほどのホロコーストを実行した。
彼は彼らの優位性を示すために、実際に物理的に破壊した。

第一世界大戦の賠償金が彼にそうさせたとはいえ、彼の行為は許されるべきものではなかったかもしれない。
しかし、俺は彼のその勇気を認めざるを得なかった。
俺にはそのような勇気が存在しなかった。

俺はその状態を常識があるからとか人として当然と言って偽ることができた。
しかし、それは俺にはとても卑怯にみえた。
勇気がないのをもっともらしい言葉で隠すという卑怯な行為だった。
「ほんと、いつもいい人だよね」
昔、Mは俺をこう評価していた。

 俺は卑怯な奴だった。
そんな自分が嫌だった。
そうは言うが、俺の理性が破壊的衝動を制している。
恐らく、その衝動を解き放った途端俺は実に愉快だろう。
抑え込まれていたものが解き離れていくときのエネルギーはすさまじいものがある。
しかし、のちに俺はその行為を後悔するだろう。
「いい人」という称号は時に俺の自尊心を傷つけたが、俺はそこからも生きやすさを得ていた。
「いい人」という評判が俺の周りを信頼させた。
それらを失ったあと、俺は生きられないだろう。
これは理性とは言えなかったかもしれない。
損得勘定とでも言うべきだった。
もしかしたら、総合的に得だったら、Mを破壊する行為を躊躇わなかったかもしれない。
そんな思考をしている俺はまた卑怯な奴だった。
結局、俺は卑怯だった。
今の俺は自尊心を傷つけずに逃げる場所がなかった。

小説に出てくる人物はもしそこに葛藤があったとしても、結局は悪事を働く。
俺にはそれが出来そうになかった。
彼らみたいな壮大な犯罪を引き起こせなかった。
しかし、俺なりにできる悪事を行うことに決めた。
俺ができる範囲でMを破壊しようと決めた。

 Mは俺と友達として関係を築こうとしていた。
何度も言うが、俺は「いい人」だった。
Mの中にどのような計算や目算があったのか知らないし、そのようなものはないと思いたいが、俺はMにとって友達として不足はなかった。
恐らく、Mは俺に異性間の友情を見出すことができた。
そもそも俺はMと「親友」から始まった。
しかし、恋人から親友に戻ることは不器用ゆえに俺にはできなかった。

Mは俺を友人として信頼していたはずだ(今後も友人として関係を続けようと思っていたはずだ。)。
そこで、俺はその信頼を破壊することで、Mに対する報復を行い、Mに罪の意識を与えようと考えた。

俺がこの類の傷を負ったのは、確か中学生のころだった。
俺は好きな子がいた。
しかし、会話をするのが精いっぱいで、それ以上のことはできなかった。
俺は彼女のメアドを聞いた時点で今後の展開を夢見た。

理由は分からないが、彼女から俺にメールを送ってくることはなかった。
しかし、俺はそれほど頻繁にならないくらいにメールを送った。
数通やり取りをするうちに、メールが来なくなるということが何日もあった。
彼女からしたらその時間は無駄以外の何物でもなかったはずだが、俺はその事実に気が付くのを恐れた。
だから、彼女からメールの返信が来るだけで俺を安心させた。

しかし、ある日いつものようにメールを送ったら、それが届かなかった。
彼女はアドレスを変えていた。
それも新しいアドレスを俺に教えずに(念のため言っておくが、俺は嫌われるほどのストーカー的なメールを送ったわけでもなければ、彼女に嫌がらせをしたわけでもなかった。)。
俺は彼女に嫌われたのではなく、不要と評価されたのだった。
これは俺を精神的に攻撃した。

この痛みを知っているからこそ、俺は自分がアドレスを変えるときは分け隔てなく知らせた。
実際、あのような痛みを味わうことになるのは少数だろうが、そのような人を出したくなかった。

しかし、今の俺はこれをMに対して行うとしているのだ。
アドレスだけではなく、あらゆるSNSでMを排除しようと思った。
ブロックするのもよかったが、それだとMは俺に嫌われたと勘違いしてしまう危険があったので断念した(俺はMにMはもう不要だという風に思わせたかった。)。
作品名:悪魔の証明 作家名:ダストボックス