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悪魔の証明

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説明がつかなかった。

 その日も、とった写真をmixiに更新する予定だった。
しかし、その日は過って、自分のボイスに投稿してしまった。
とはいえ、別に削除する気も起きなかった。
それはそれでいいかと思った。
自分の投稿が自分のTLに更新された。

暫くすると、物好きもいるようでイイね!が押され始めた。
特にコメントはないがただイイね!が押されていく。
すると俺のTLの俺の投稿の上にあの復讐しようとしていたMの投稿が現れた。
俺は不快になった。
なぜ未だにMは俺の生活の範囲にいるのだろうか。
日常では会わなかったが、こんな形でMに遭遇するとは思わなかった。

Mの投稿はいかにもMらしかった。
Mは今でも楽しそうだった。
その投稿に対して俺の投稿よりも多くのイイね!が押されていく(コミュニティの多さもあって友達はMの方が断然多い。)。
俺の雲の写真の「上」でMは飲み会の楽しさを“証明”していた。
俺は復讐以前にただ悔しかった。
前回と違う悔しさを感じた。
俺はMに復讐できない気がした。
勝ち目がなかった。
俺はMのボイスにイイね!を押して、mixiのアプリをスマートフォンからアンインストールした。

 俺は逃げたも同然だった。
mixiから離れるのは少し苦労した。
アンインストールした次の日もアクセスしようとする自分がいた。
不快だと分かっていても習慣は変えられないのだ。
しかし、一旦習慣が変わると、何事もなかったような日常が始まった。
特にSNSが無くなっても支障はないようだった。

 大学は所謂試験が近づいていた。
前期の試験では、どの程度やればいいのかわからなかったが、後期の場合は要領が分かってきた。
単位をとればいいとは言わないが、効率的な勉強の仕方というのがあることに気が付いた。
特に過去問を仕入れるのは大切なことだった。
過去問を仕入れると、あらかじめ学習の要点がつかめるので、普段の学習にも有効だった。
しかし、当然過去問は自分だけで仕入れるのは不可能なので、友人と協力するのだ。
非リアはこの協力がないから単位を落とすんだよと半年前は耳が痛く成るほど言われたものだった。
ともかく、今期はそのように効率的に学習しようと思った。
時間があれば、参考文献を探しに図書館に詰めた。
試験の準備やレポートの準備も早かったので、焦ることはなかった。
しかし、無理をしすぎたのか、体調を崩してしまった。
一人暮らしの風邪は大事である。
なぜなら、どうしても栄養面で満足のいく食事は作れないし、試験が近いので看病を頼むのも申し訳ない。
結局一日で治ることはなく、数日休むことになった。

 数日休んだ分の授業内容については友達に聞いた。
なので、ほぼ支障がないと思った。

 ついに、試験の日だ。
しかし、いつもの会場に行くと誰もいない。
確かに早めに着てはいるのだが、一人もいないのはおかしい。
不安になったので、掲示板に行ってみると、教室が変更されていた。
試験なので遅刻は認められない。
認められたとしても、試験時間をその分無駄にすることになる。
俺は走って教室に向かった。

結局遅刻はしてしまったが、試験には影響がなかった。
しかし、なぜ俺はこんな重要なことを知らなかったのだろう。
この授業を履修している友人に聞いてみると、どうやら俺が欠席した日にその変更を伝えられたらしい。
それに加えて彼はその確認をmixiで確認したらしい。
俺も彼のマイミクなおので、それを見ているかと思ったらしい。
成るほど、SNSではそのような有益な情報の共有も行われるらしい。
特に試験前は、よくあるらしい。

そう考えると、今の俺の状態は良くない。
このままでは、同じことが起こりかねない。
SNSは続けたほうが良いかもしれない。
一度はやめたが、もう一度始めようかと考えた。
といってもアカウントは残っているので、始めるという感じではないのだが。

 いざ、始めてみると相変わらず、“証明”の数々であふれていた。
試験前のような、有益な情報はほとんど確認されなかった。
しかし、無益だとわかっていても、そこにアクセスしている。
そして俺の方も間もなく“証明”を始めた。
この証明は全体に対する証明ではなかった。
つまり今回の“証明”は一途にMへの報復行為である。
俺のMがいない世界で楽しく生きている姿を世界の外のMに見せつけるのだ。
恐らく、Mの方が俺よりも楽しむのはうまかったし、“証明”は本心のものだった。
しかしそれは俺に関係がなかった。
俺なりにMがいない世界で楽しんでいる姿を見せるつけることで、俺は自尊心を保てた。
Mより低い身分に落ちぶれずに済むのだった。
Mからイイね!がもらえた瞬間に俺は解放されるのだ。

解放の日を夢見て、俺は日々努力した。
しかし、Mからはなかなか降伏しなかった。
もしかしたらMはそもそも俺を敵視していないのかもしれなかった。
眼中にないのかもしれなかった。
それでもあきらめなかった当時の俺の執念は驚嘆すべきものである。

 ある日、Mに新しく恋人ができたことを知った。
既に俺はMに恋心がなかったのだが、とても口惜しかった。
それは、Mが幸せになるからである。
Mは俺が存在する限り、不幸せでなければならなかった。
少なくとも俺よりも不幸せでなくてはいけなかった。

ここから、俺の努力も一層力を増した。
自己と生活を保つためにはこれしか方法はなかった。
幸運なことに、Mは俺と付き合っていたとき同様に彼氏の名前は出さなかった。
そもそも、投稿自体が減った。
それでもMが頻繁にアクセスしているのは、Mのアクセス履歴を見れば明らかだった。
つまり俺の投稿を見ている可能性はあった。
この瞬間は、俺は反撃していた。

Mの新しい彼氏について、興味はあった。
その人物は男の社会のなかでの階級でどの程度の男なのかに特に興味があった。
なぜなら、それがMの幸せに相関すると考えたからである。
俺が仮にその男よりも多くの面で勝っていた場合、俺の地位は守られた(俺が仮にMよりも評判のいい女性と仲がいいことを証明すればさらに確かに、地位を守れた。)。
このようなときに、自分が通っている大学の知名度が大きな要素になる。

しかし、Mはその男に関する情報をほとんど提供しなかった。
Mも色々写真をアップロードするのだが、どの男がその男か皆目見当もつかない。
俺は彼に関する調査をあきらめた。
それでいながら、Mの付き合う男だから大した男ではないと勝手かつ矛盾した思い込みで我慢した。
少なくともその思い込みは俺の自己を保つ上では、十分だった。
もはや彼が誰でもよかった。

 ところが、ついにMはゲリラ作戦を敢行する。
ゲリラ作戦の一番の利点は相手が油断をしているところを狙うため、大きなダメージを与えることができることだ。
俺も今回は多大な損害を得た。

それはいつものmixiという戦場では起きなかった。
そこであれば俺もある程度警戒しているし、Mもそこでは大した攻撃は仕掛けなかった。
ゲリラ戦はTwitterで起きた。
Twitterは多くの人が、プライベートな呟きを行う傾向があった。
作品名:悪魔の証明 作家名:ダストボックス