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悪魔の証明

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なので、一度退会してから、新しくアカウントを作ってM以外の友人に再び友達になる。
所謂、友達整理である。
友達整理という形にすることで、不要になった人間はMだけではないということが伝わる。

Mはもしかしたら既に俺に興味がないので、俺のこのような努力に反して、何も感じないかもしれない。
しかし、俺はMに損害を与えられると信じたかった。
それでそのまま、Mを俺の世界から追放したかった。

 この時点では既にそれは破壊的な衝動でなく、破壊的な感情だった。
明らかに、計画性が伺えた。
俺が過去味わった精神的損害を、報復行為としてMに与えることで、俺は生きる糧を得るのだろう
ついに、カーストから脱することが出来るのだろう。
下剋上をもって、物語は終焉するのだろう。
そう考えると愉快になった。
悪事の後の世界を考えると愉快だった。

しかし、なかなか悪事を働いている自分を想像できなかった。
俺は本当に悪事を働けるのか不安だった。
俺は意気地なしとなるのを最も恐れた。

 悪事の後の世界を想像するだけで、俺は何も行為を起こさなかった。
その行為に対して踏み出そうともしなかった。
このままでは俺は不愉快に生きなくてはいけないことは自明だったのにもかかわらず、なぜか気が進まなかった。
もはや、焦りはなかった。
しかし、確かに不愉快だった。

 暇なときは相変わらず、mixiにアクセスした。
あまり投稿することはなくなった。
mixi上の自分と実際の自分とのかい離に苦しくなったのも要因だったかもしれない。
実際の自分よりもmixi上の偽りの自分のほうが階級が高いという状態は、とても不快だった。
しかし、そうは言っても今の状態は自然といえば自然だった。

投稿はしないが、友人の投稿は見ていた。
実に無益な証明の数々だ。
なぜ俺はこんなものを見ているのだろう。
それは俺にも理解できなかった。

新しくボイスが更新された。
Mだ。
授業をサボってディズニーランドか。
写真がないところから察するに、男と居るのだろう。

俺は不快だった。
しかし、もうどうしようもなかった。
俺はこの不愉快と衰えた破壊的な感情を抱きながら生きていく。
自分で殺めることもなく、ただ生きていく。
俺は勇気がなかった。
作品名:悪魔の証明 作家名:ダストボックス