空 —ソラ—
私は、大学で文学サークルに入り、本気で作家を目指し物語を書き始めた。
たまに来る母からの手紙によると、弟は家を継ぐために頑張っているらしい。
体の調子も良い様で、仕事の憶えも早いらしく、高校卒業後、本格的に働き始めるとのことだった。
父は相変わらず、頑なに
「作家になるだなんて認めておらん!」
と言っているらしい。母が言うには、
「一回反対した手前、いまさら認めるのが恥ずかしいのよ。もう、変なところ頑固なんだから!」
とのことだった。
上京から一年ほどすると、弟からも手紙が来た。
「姉さんへ
姉さん、久しぶり。
俺の方は、まあそれなりに大変な事はあるけど、楽しくやってるよ。
姉さんはどうしてる?
昨日、高校の卒業式だったんだけど、その後、父さんが店を継いでいいって言ってくれたんだよ!
もちろん、今すぐって訳じゃ無いし、もっと色々な事を勉強してからだけどね。
あ、そうそう、父さん、もうそれほど姉さんが出てったこと、怒ってないみたい。
それで……作家、なれそう?
無理だったら家に帰ってこればいい、なんて母さんは言うけど、俺は姉さん帰って来たら怒るよ。
夢を簡単に諦めるな!
我が家に姉さんの居場所は無い(>u<)!
姉さんの最愛の弟より」
この手紙を見た時、思わず笑ってしまった。
「顔文字って…幼い……」
弟は、なんだかんだ言って優しい。
遠回しだけれど、きっと誰よりも人思いだ。
「やっぱり、私が継がなくて正解だよ、お父さん」
誰に言うでもなく、そう呟いた。
その後、私はいくつかの賞に応募してみたものの、全て落ちてしまった。
そしてその原因は何か、知りたいと思い、二十歳の時、ついに持ち込みをして、今に至るーー。