フライド(ポテト+チキン)
錠が解かれ、ドアが開く。谷脇は手を振りながら出発していく。
室内の電気が点く。勉強机の蛍光灯。百合(17)は勉強していたようだ。普通の野郎は見ることのできない百合のパジャマ姿。百合が意外に落ち着いているため、僕はテンションが下がり、頭が痛くなってくる。僕と百合はカーペットに向かい合わせに座る。
「家の場所、よくわかったね」
「調べたから」
「どうしたの?」
「(照れて)、なんか来ちゃったのね」
「私、三浦君はクールで格好いいイメージなの」
「それも俺なんだけど、(胸に手をやり)、こいつも俺なんだ」
「・・・へえ、二人いるんだ」
頭痛がひどくなってくる。僕はこらえながら、
「百合ちゃん、好きな人いるの?」
百合は臆することなく、
「三浦君だよ」
「(笑いながら)、知ってたけど」
百合も笑いながら、
「来てくれて嬉しい」
「百合ちゃん、頭痛薬ある?」
「あるよ。頭痛いの?大丈夫?」
僕は錠剤をもらって、飲んで、
「ちょっと寝ていい?」
僕はコートを脱ぎ、その場に横になると、百合が、
「そこで!?ベッドで寝ていいよ」
「百合ちゃんは?」
「私、朝方人間なの。さっきまで寝てたから」
僕は素直にベッドにもぐり込む。
隣に誰かがいる。「ここは?」。見たことのない天井。「ママか!?」と隣を見る。「百合ちゃん」。僕はこんなにも気持ち良く寝たのは久しぶりである。心地よい掛け布団、大きな枕、適度の室温。横の百合は寝ている。僕は枕をずらしてあげる。「最後は百合ちゃんの家だ」。頭痛は治っているが、僕に睡魔がやってくる。迷惑をかけないよう、ベッドの端に寄る。
僕はいつの間にか横柄にも一人で寝ている。快眠で健やかな状態。光の元へ目をやると、百合は勉強をしている。僕はしゃがれた声で、
「今何時?」
「十時だよ」
「夜の?」
「朝の」
「学校は?」
「今日は祝日。天皇誕生日」
僕はおもむろに、
「百合ちゃん、こっち来ない?」
「何するの?」
「(無邪気に)、こっちにおいで」
百合ちゃんは細身で長身である。モデルのようなスタイル。椅子の上で膝を抱えてながら、「(笑って)、よし、やめた」
とベッドにやって来る。僕はベッドであぐらをかき、布団にくるまっている。百合ちゃんは僕の隣に座る。その時、僕は布団を投げだし、百合の脇をくすぐる。百合、
「(楽しそうに)、やめて」
と。僕は面白がり、こちょこちょを繰り返す。パジャマが肌け、ノーブラだと判る。少し乳房が見えてしまう。寝かしつけ、僕は馬乗りになり、こちょばし続ける。
「楽しい?」
「ははは、ちょっとやめて」
僕は左手をパジャマに入れ乳首を触り、右手は腰のお肉をつまむ。百合、
「(冗談ぽく)、悪人だ、悪人」
と漏らす。僕は百合に静かに口づけをする。
十二月二十三日、吹雪である。昼頃、僕は帰宅するのに、新富から街まで歩いている。なぶりつけてくる雪は少し湿っぽい。「早く帰ってまた寝よう」。
家に着き、僕は即二階の自分の部屋に行く。母が話かけてくるが、無視してドアを閉める。
ドア越しから母、
「あんた、どこに行ってるの?」
「頼む。ほんと寝てないんだ。後にして」
母は何も言わずにその場に少し立ったままだと想像つくが、のち階段を降りていく音がする。
僕は目をつぶる前に、この絶頂の、噴き上げてくるような、それでいてはかなさを感じる性的感覚を考える。「毎日、毎日続くのか。誰か教えてくれ」。一番手に届く位置にあったミンちゃんが遠のいていく。でも、僕は人間らしいのか、それでも良いと思い始める。
夢の中。夏のスタルヒン球場。野球をしている者や警備員などは誰もいない。ただ、観客席には、チアーガールの格好をしている真紀とママと百合がいる。踊りは完璧に統一され、真剣そのもの。みんな、現実以上に巨乳である。僕は彼女達のすぐ下の席で、時折見えてしまうパンツを覗いている。
僕は勃起している。我慢できなくなり、立ち上がって、まず、一番ボインのママに、
「おっぱい見せて」
と言うと、ママは
「いいわよ」
とダンスを止め、上半身のユニフォームを脱ぎ、ブラをめくり、ボインを引っ張り出す。僕は揉んだり、吸ったり。すると、真紀が全裸になり、僕に抱きついてくる。僕は右手で真紀の陰毛をかき分ける。慌てて、
「百合ちゃんはそのままで!」
と言えば、百合は止まり、
「誰もいないよ」
「もったいない!百合ちゃんは僕にももったいない!」
百合は僕のところへ来て、僕の耳を舐める。ママは両手を僕の両肩に添え、真紀は内腿には肉汁がつたっている。僕はママの乳首を吸いながら、右指は真紀の股間に、左手は百合のパンツの中で、尻を触っている。誰も僕のペニスをいじっていないが、僕は射精してしまう。
球場の階段を、僕と百合が中で、四人肩を組んで降りていく。服装は元に戻っているが、僕のパンツだけは濡れたままである。地階に着くと、カツ丼という旗がある。みんな、食べると。僕が売店の前へ行くと、店員はミンちゃんなのである。僕は声も出ない。忙しそうにしているミンちゃんなのだが、エプロンの下は裸である。僕は、
「ごめんね。ミンちゃん」
と思わず出てしまう。
ノックの音がして、寝返りをする。母の声、
「崇、崇」
僕はダルそうに、
「何?」
「友達が来たよ」
「誰?」
「女の子ふたり」
僕は、切りつけられた痛みのような感覚で、さっと目が覚め、急いで玄関に向かう。部屋の前で突っ立っている母、
「(困った顔で)、あんた、その格好で」
玄関の中には、かおると絵里がいる。ニット帽を被っているかおるが、
「遊ぶって言ったじゃん」
僕は飛車のごとく飛ぶように、女の臭いを嗅ぐ。かおるは何故か笑っている。絵里は僕の下半身を見ている。
「どうしたの?」
と僕は絵里の視線を辿ると、なんとトランクス姿で、しかもあそこが今にも顔を出しそうになっており、その周辺は精液まみれになっている。僕は笑みをこぼして、
「いや、もういいよ。遊ぶのいいけど、うちはダメだよ」
絵里が口を開く。
「私の家に来る?」
僕は窓辺でタバコを吸っている。外は大雪である。新築の家である二階の絵里の部屋は、モダンで普通の部屋より一回り広い。ベッドはセミダブルである。大人の勉強机と椅子。テレビは無いが、パソコン、コンポ、棚にぎっしり詰まったCDなどがある。よくあるぬいぐるみはなく、洒落たお部屋である。かおると絵里は床に座り、僕を見ている。かおる、
「何して遊ぶ?」
僕は首を捻りながら、
「・・・・・・」
絵里はかおるに、
「怒ってるの?」
かおるは明るく、
「三浦君!」
と呼ぶ。僕は笑顔になって、
「よし、トランプしよう」
トランプをといて、裏のままに流して輪を作る。「豚のしっぽ」というゲームである。これは、勝者も決まるが、ビリを決めるゲームでもある。かおるも絵里も初めてらしい。僕は財布を出し、油性マジックも用意させる。ビリになると、近くのセブンイレブンに、顔に落書きをされて、パシらなければならない。
作品名:フライド(ポテト+チキン) 作家名:みちゆき