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フライド(ポテト+チキン)

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「・・・、三浦君さー、わかってる?」
「何を?」
「三浦君、モテモテなの」
「(笑って)、やっぱり?」
「えっ!」
「嘘、嘘。モテるわけないじゃん」
真紀はリモコンでテレビを消し、真剣な顔つきになる。
「私、三浦君とエッチしてるんだよ」
「え!」
「高一の夏。ラブホテル白夜で」
「・・・。うん?なんか・・・」
「・・・覚えてる?」
「わかった!かな?」
真紀は手を組み、瞳を閉じて、
「忘れちゃダメだよ」
と恥ずかしながら言う。僕に、ミンちゃん、真紀すらも包容する熱い血がたぎってくる。
僕は冷めたお茶を一気に飲み干し、真紀のそばに寄る。真紀、
「今、また一緒に寝てくれる?」
「真紀!わかってきた。大丈夫だ!」
セミロングの髪。僕は横から真紀の頬にキスをする。
 僕は、毛布の中で、真紀の素の横腹を左手で撫でながら、うつ伏せに近い態勢で、
「気持ちいいね」
真紀は仰向けに、まだ快楽が続いているのか、うわずった声、
「うん」
僕は初めてではないが、初体験の心地である。精神と肉体。僕が受ける気持ちは、百パに近い。僕が与える物理運動は不可思議にも百パなものだろうか。水が氷に成りはじめるような、いや、逆に、氷が水になっていくような、だらしなさ、そんなようにも考えられる。
 十二月二十二日、今日は晴れ間が広がっている。昨日の雨と今日の氷点下で、道路はガタガタしている。未だ汚い。
 セックスを僕は覚えている。
 僕は登校中に見かける高校生に問いたい。
「セックスにそんなに興味あるの?」
茶髪やパーマ、オシャレなコートなど。
「それら全ての延長は、あれなの?」
僕は頭がスカッとしているのだが、真紀のせいで、これまでの轍が、思い出が気になり始めている。
 僕はミンちゃんの友達に生徒玄関で出くわす。見つめられる僕。真紀の事もあり、普段のように声も出ない。友達は、
「三浦君、怒ってる?」
と言う。僕は一つの溜息で片づける。
 授業中。僕はみんな程進学を望んではいない。机上に教科書、ノートはあるものの、勉強には上の空である。古文の白井先生、熟女教師である。関係ないかもしれないが、僕は股間が熱い。誰しも、セックスをせざるを得なくて、しているのか。または、したくてしているのか。後者の場合、それは悪ではないだろうか。「僕は悪でもいい」。
 僕は昼休みに一人で、何気に廊下に出ていると、同じクラスのかおる(17)と絵里(17)が近づいて、かおるが
「三浦君、大丈夫?」
と明るく言ってくる。
「何が?」
「別にいいんだけどさー。今度、遊ぼうよ」
僕は意表を突かれ、笑ってしまう。絵里の顔はマジである。僕、
「いいよ」
かおると絵里、
「やったー!」
僕は、昨晩の真紀の言葉を思い返す。「モテモテ」。
 二人の顔をかわし、ひょいと目をやると、ミンちゃんがこちらへ歩いてくる。僕は肝が据わったのか、動じない。廊下の真ん中に立ち、ミンちゃんを受け止める姿勢になる。近づいてくる。目を反らさない僕。だが、僕の右側を素通りする。僕が、
「ミンちゃん!」
と呼び止めると、ミンちゃんは振り返るが、照れ臭そうな表情だけを見せて、再び歩いて離れていく。かおる、
「もう」
と怒る。絵里は笑っている。僕はこんなに女の子達と絡んだのは、久しく無い。「僕のことを変な風には思っていないようだ」。
 放課後の街角。僕は買物公園を歩いている。日が暮れ、ちょうど皆が帰宅の時間である。いつもより賑わい、人だかりがあるのは気のせいか。
 西武前で、どこからか洋楽が流れている。マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」である。僕は「良い曲だな」と、その場でノッていると、その音量が大きくなってくる。気になり辺りを見渡すと、谷脇(16)が寄ってくる。谷脇が
「兄さん!メリークリスマス!」
と叫ぶ。CDラジカセを持ったサッカー部の後輩も現れる。
「お前ら、ちょっと、まず、音を切れ」
後輩はボタンを押す。谷脇、
「兄さん、あそこを見て」
と言い、信号付近に指を差す。そこには、ミンちゃんとその友達がいるのである。僕はまたもや恥ずかしくなってくる。自分の恋路が谷脇まで知っていることに。
「谷脇、余計なことをするな!」
「だって兄さんが可哀想だから」
「・・・チェッ」
「兄さん、待ってるんだよ!」
「うるせー」
僕は照れ隠しの時、何故かケンカ口調になる。
「なんか疲れた。帰るわ」
「兄さん、本当にいいのかい?」
「・・・谷脇の家は?」
「ボクの家?みんな来るの?」
「いや、俺だけ」
「・・・いいけど・・・」
「本当に身体が、寝るだけだから。いいか?」
ラジカセの後輩が、ミンちゃんのところへ行って、事情を説明している。谷脇、
「やったー!兄さんとゆっくり話したかった」
と喜ぶ。僕と谷脇は、ミンちゃん達に手を振り、タクシーに乗る。
 谷脇の部屋。ごくごく普通の高校男子の部屋である。壁には、サッカーのカレンダーや、谷脇のサッカー少年の写真が飾ってある。僕は既にベッドを占拠している。谷脇はソファーに座っている。
「兄さん、なんも食べないの?」
「うん、いらんわ」
僕は横になり始める。
「兄さん、なんでサッカー部を辞めたの?」
「(笑って)、知らんわ」
「もう、言うよ!」
「(面倒臭そうに)、何よ?」
「兄さん、ユース代表なんだよ!」
「はあ?」
「ゆっくり思い出してみて。ゆっくり」
「・・・あ?」
「兄さん、わかる?」
「・・・、なんかあったな。(笑顔で)、おおよ!」
「思い出した!?兄さん、国立に行ったんだよ!」
「なんか夢みたいだな」
「ボクは兄さんを目指して同じ高校に入ったんだ」
「そっか」
僕は瞬間的に心が躍る。自信というものは、やはり実務経験で培うものなのだ。国立での試合内容も思い出してくる。
「谷脇、俺、プロかな?」
「なれるよ、兄さんは」
谷脇はとても嬉しそうに話す。僕は様々なシーンが止めどなく流れ、少々頭が重くなってくる。
「谷脇、水くれ」
「兄さん、大丈夫?」
 室内の温度も高く、僕は学生ズボンにTシャツで布団をかけて寝ていたため、汗をかいている。最初、この場所がどこか解らずに戸惑う。時計は約十二時。僕は頭を確かめる。セックス、先程のユース代表。「大丈夫だ」。
僕は酒というものを飲んだことがない。いたずらはあるが。ビールを飲んでみたい気分になる。
「谷脇!」
僕は、ソファーで寝ている谷脇を揺する。
「何、兄さん?」
とまだ目を覚ましていない。
「街にいくぞ!谷脇!」
「え!?街!?」
「行くぞ、マジで」
「今から!?」
「俺、ビール飲みてえ。お前、腹減らんか?」
「そうだ、なんも食べてない。すごいおなか空いてる」
「やべ、金あったかなー」
「兄さん、いいよ。親から借りてくるから」
 寒い夜中。雪は降っていない。ネオンがきらめく三・六街。僕と谷脇は学生服で闊歩している。
「なんぼ借りてきた?」
「三万」
「足りるかなー」
「十分じゃない?」
「お前、スナックとかクラブに行ったことある?」
「あるわけないよ」
「行ってみたくない?」
「(驚いて)、マジ!?」
僕はふらっと看板を見て、
「スナック都。どうよ?国立じゃん」