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気が付くと、彼は中学校の校庭に立っていた。
辺り一面銀世界だ。見ると、一人の少年が、その誰の足跡も残されていない雪原を、ザクザクと除雪しながら歩き回っている。彼はその無神経さを憎んだ。
よせ、どうしてこんなきれいな景色を汚すんだ、やめろ。
すると、その妙に大人びた顔をした少年は、口を歪ませて大真面目な顔で言った。
どうしてって、誰も汚していないからさ。君もやらなきゃいけないんだ。さあ、思い切って足を踏み出すんだ。
いやだ、僕はいやだ。
けれども彼の言葉とは反対に、彼の足は雪を蹴散らして走り出していた。

彼の周囲の風景は一変していた。そこは、彼が通っている高校のグランドだった。
そうだ、あの日だ。大雪が降って授業が無くなり、一日中雪と戯れた日だ。彼の周囲では雪合戦が始まっていた。無数の雪玉が飛び交い、その中の一つが突然彼の胸元で砕けて飛び散り、シャツの中まで雪が飛び込んだ。向こうであの娘が手を叩いて笑っている。あの娘が投げたんだ。
ようし。
彼も雪を掬って丸め、あの娘に復讐すべく投げようとして振りかぶった。その時、目の端に教室が映った。教室では、3つ、4つの影が机に向かい、熱心に鉛筆を動かしていた。それを見たとたんに、振りかぶった雪玉が重くなった。重い、たまらなく重い。ついに彼はそれを支えていられずに倒れた。雪玉は何倍にも膨れ上がり、彼を押しつぶした。雪玉の下敷きになってもがく彼を見て、あの娘は笑い転げた。彼が悲鳴を上げ、助けを呼べば呼ぶほど笑い転げた。
気が付くと、いつの間にか彼のクラスの全員が彼の周りに集まり、彼を指さして笑い転げていた。小学校以来の親友のあいつも、一時つきあったあの娘も。
助けてくれ、誰かこいつをどかしてくれ。誰でもいい、助けてくれ。
だが、笑い声は大きくなるばかりだった。そのとき、絶望的な気持ちになった彼の耳に、さっきの大人びた顔の少年の声が聞こえた。それは、耳を澄ますと、彼自身の声のようでもあった。
誰も助けてくれないぜ。そいつをどかせられるのは、おまえ自身だけなのさ。
作品名: 作家名:sirius2014