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檀上 香代子
檀上 香代子
novelistID. 31673
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めぐり糸に結ばれし、わが人生

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した男の心変わりに苦悶する心情を日舞であらわす場面、急に高山先

生〔だんちゃん、ちょっと踊りの振りと芝居の流れを見たいから、T

さんと変わって踊ってみてくれ〕といわれ、Tさんの踊りを踊るため、

扇を持ちスタンバイ。曲が流れ出した途端、今の自分と重なって不安

で胸が締め付けられる悲しみの感情が湧き上がり、眼に涙を溜めたま

ま、踊り終わった。(ありがとう、座って良いよ。)涙を溜めた眼を

見られたかなと、気にしながら席につきながら、頭の隅で、引き出し

にしまうための心の確認をしている自分が居るのに驚いた。

随分あとになって判ったのだが、この日のレッスンの後、私と付き合

っていたMは、高山先生から養老の滝にわれご馳走になり、高山先生が

<だんちゃんとどうなってるの?>と聞かれ<女性って難しいです。>

と答えたところ、<だんちゃんはいい子だよ。相手によってすごく良く

なるか、徹底的に悪くなるか、中間のない子だから、男としての責任

重大だぞ。あの仔を泣かすようでは、男としてダメだよ。>と、意見さ

れたそうだ。 気にかけてくださっていたんだ。 有難かった。ただ、

不思議に思うことは、私が中学生後半から高校生の頃、母が高山先生と

同じような事(良いか悪くなるか、中間のない子だけに心配だ)と姉達

に言っていたと成人してから姉に聞いた。 どうしてそんな風に見えた

のか、本人は理解不能だ。


  (8)3年進級 中間発表会

 3年に進級~途中で劇団に入った人、退学した人、年毎に少なくなっ

た。クラスメイト、入学時に60人から30人になっていた。

、秋の発表会の作品は、秋元松代の(礼服)勝手な想像だが、このとき、

先生の劇団で、秋元松代の(かさぶた式部考)を演出していたからでは

ないかと思った。私の役は、末っ子の保子。母の葬儀の場の幕開き、母

の側で泣き崩れている保子。たち稽古に入っても、幕開きでの保子の悲

しみ、心情は頭の中では判っているのだが、泣き崩れるたびに自分の心

の奥で、(違う、違う、泣いたふりだ)という。 自分自身もなにも感

じてないとわかっているのだが、何をどうしたら? の心境の日々。~

ある日、スタンバイ〔ヨーイ〕パーン合図。 母の床に身を伏せた途端、

肌の温もり、まだ冷め切らない温もりが、腕から全身に流れた。

私の皮膚が思い出した。産まれて30秒で死んだ弟を抱いたときの温も

りを。 激しいショックと悲しみが、背筋を這い上がり、涙が溢れて、

止まらない。その後、姉と母の思い出を、語る場面。縁側で座布団に、

背中を丸めて座り淋しそうにしている母の姿が、目の前に見えてきて、

涙がどっとあふれ〔コレは芝居の稽古なんだから、涙を、止めなくて

は。〕と思えども、感情が走り出して止まらない。姉役のMさんのビ

ックリし息を呑んだ顔。クラスメイトも唖然といった体。でも、その

時から、私の芝居に変化した。あの場面でつかんだものが感情が定着

したのだ。そして毎回、その場面になると、クラスの空気が、シーン

となり、私の台詞を聞いてくれているの。冷静にその雰囲気を感じて

ることができている私。 なんだか二人に分裂したような私が居た。

本番の時は、客席が全員が集中した、体中の皮膚が、シーンとした緊

張した空気、それでいて落ち着いた空気をピリピリ感じた。

役の感情、母のイメージ、動きは、私の中に。そして、お客さんは集中

して私の台詞をまっている、ともう一人の自分が、感じている。

とても気持ちのいい瞬間。 人間って、同時に、多くの事を想い考える

なんて、想像外でした。 他の人にとっては、当たり前なのかもしれな

いけど、私にはすごい発見、本当にその場面だけの短いものだったが、

舞台に立つすばらしさ、すごさを感じました。

反省~泣きの保子だったこと。人は、人前で泣きたくなった時、その

反対に、泣くまいセーブしようとする心が働くのを忘れて泣いていたと

先輩から言われた。しかし、今回は2~3歩進歩したのではないかな。

礼服で知った、舞台の素晴らしさ~♪ 舞台に立つ魅力を実感した。


  
  (9)貴重な体験 演出助手の経験

 礼服の時、保子以外のもう一つの仕事、演出助手の仕事が当たった。

何時もは程島先生のときは大田省吾さん、高山先生の時は灰地ジュン

さんが演出助手をされてたが、この時は、演劇座のかさぶた式部考の

舞台に出てた灰地さんは忙しいのでお休みが多く、生徒の中から演出

助手を選出する事になり、私があたった。勉強するには大変だったが、

おかげで戯曲を読むという事を学んだ。高山先生の演出の意図を理解、

演技者の自由な発想を大事にしながら、場面場面の表現しなくてはな

らないものを俳優に理解させ演出する先生のお手伝いが、できるよう

になるには、戯曲を繰り返し、繰り返し読んで、全体が見える必要が

あり、今までのように演じる役目線で読んでいたのでは、演出助手の

仕事は勤まらない。戯曲を読むこと、芝居を創ることが、少しばかり、

判りかけた。面白いとおもった。そして、きっと、この調子なら舞台

の端から端まで歩けるようになれそうだと未来の明かりを、感じた。


 (10) スタジオの生徒からバレエ団員へ


バレエの研究所に入って一年経った頃、利子先生に呼ばれ〔今月から、

バレエ団員になったから、お月謝はいらないのよ〕といわれラッキーと

飛び上がるほど嬉しかった。生活の切り詰めも限界に近くなっていた。

だから東京創作舞踊団の団員になれ月謝不要になれたことは天の助け。

あの時は自分にそれだけの才能があったのだと思ったが、後で考えると

本当は先生たちの思いやり優しさだったと思う。ただ月謝いらないとい

うと私が劣等感を持つので、自分の力だと錯覚させてくださった。

振付師の藤井先生が中学校の教師であったので、私への配慮だと思う。

芝居の勉強とバレエの2足草鞋生活。4年後新人公演に作品(彼女は

半分眠りながら考える)という作品でプロデビューした。 

この時一応バレエ新聞で、江口先生に「衣装の工夫はイマイチだが、

可能性に期待できる新人だ」と評された。 先生や舞踊団の仲間達の

優しさに包まれていた。


  (11) 俳優座劇場での卒業公演古典に決定

  
3年後期いよいよ卒業に向けて始動。卒業公演の作品はフランス喜劇 

モリエールの「女学者」に決定。30人クラスなのでダブルキャスト、

A班B班に分かれて配役発表前に、上演作品が決まると自分が希望す

る役を、高山先生に第2希望まで書いて提出。私の今の力から考えて、

当たるとしたら召使かなと思いながらも、できれば末娘か母親が来れ

ばとの思いで希望を提出。~その結果は~末娘でもなく母親でもなく、

〔叔母のベリーズTさんと檀上さん〕エッ、ウソでしょう、そんな大

役が出来る訳ないじゃ! そう面白く役者としてやってみたい役だが、

クラスの中で、優秀なTさん、Hさんが、第一希望で出してた役だ。