文明開花〜櫻座物語〜
江戸の皆の持つ鈴は猫などの飼われているものを始めとし、大事な荷につけたりする。このようにモノの存在を分かりやすく、目立つようにという目的がある。これが一般的だな。
だがしかし本来鈴は神具であるのだ。神を祀るためにある。
また鈴は誰かを呼ぶためにも作られている。もちろん神を卸す時も含める。この鈴は呼び鈴という名だ。
だから鈴にも様々な役割、用途がある。
音とは深いな
と、風雅は言う。
誠一郎は難しい言葉ばかりで理解するのに時間がかかったが、つまり鈴は”特別”なんだろう?
「馬鹿か貴様。私の話を聞いていたのだろう?」
「聞いてた」
誠一郎はいたって真面目に答えた。
しかし風雅はそれを挑発と受け取ったのか眉間に皺を寄せて誠一郎の前に立ち、怒鳴った。
「ならばなぜ”特別”なんて言葉が出てくる!どう要約したらそうなるのだ!」
「いや、なんかそう思った・・・から?」
「私に聞くなぁ!!!」
風雅は誠一郎に呆れ果てたのか、部屋の奥へとぶつぶつと不満を一人でいいながら行ってしまった。狭い家なので風雅の壮大な溜息が縁側まできこえてしまう。
「・・・・・・仕方ねぇじゃん」
直感的にそう思ったんだ。
風雅の説明はなんとなく理解できた。鈴はヒトにとって大切な”目印”なんだってこと。でも鈴はそんな器じゃおさまりきらないんだ。昔からあるものなら今まで伝わってきたどこかに理由があると思うんだ。それは「神具であるからだろう」と風雅に言われてしまうかもしれない。
でも風雅も言っていたように音は伝えてくれるんだ。深いんだ。
理由の中にある”特別”は必ず分かる。
必然、なのだ。
______ちりん
「こんにちは」
音の先には藤色の着物の髪の長い女性であった。
歳は、同じくらいだろうか。
彼女に語りかける。
「お久しぶりです」
作品名:文明開花〜櫻座物語〜 作家名:夏華