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文明開花〜櫻座物語〜

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------ちりん。
まただ。季節ハズレの風鈴の音。
今は、桜の季節。桜はまだ深緑に染まってはいない。
誠一郎は風雅に尋ねる。


「お前さ、風鈴好きだったっけか?」

「なんだいきなり。突拍子もないことを聞いて・・・。」

「起きてから風鈴の音が気になって仕方がねぇんだ。風物詩にうるさいお前がなんで季節ハズレなことしてんだろうと思って。」

「・・・・・・風鈴の音?それは何だ。私は風鈴なぞ飾ってはいない。貴様の聞き間違いだろうよ。ちなみに風鈴はうるさいから嫌いだ。」

「あっ、そ。」


頭の後ろで指を絡ませ腕枕をつくる。
変わらない日常。
毎日だらだらと空を眺めては些細な事で喧嘩して。
大抵の場合は数分でどちらかが折れて自然に仲直り。
そんなゆったりとして----心地がいい。


-------ちりん。


「・・・ほら!また聞こえた!風雅にも聞こえただろう?」

「ん?あぁ・・・だがこれは鈴の音だろう。」

「すず?なんだそれ。」


ちらりと風雅を見ると、心底呆れたようではぁ、と息をつかれてしまった。




作品名:文明開花〜櫻座物語〜 作家名:夏華