文明開花〜櫻座物語〜
瞬間、誠一郎は恥ずかしくなって風雅を突き放した。
そのまま尻もちをつくかと思ったが、風雅は少しバランスを崩したくらいで、平気な顔をしてしゃがみこんだ誠一郎の隣に座った。
なんだか無性に腹が立つ。
「盗み聞きなんて卑怯な真似しやがって・・・。」
「盗み聞きなんて人聞きの悪い。」
「じゃあなんだって言うんだよ。」
「うっかり聞いちゃったんだ。とか?」
なんだそれ。
風雅は意味不明な理屈で無理矢理説き伏せようとするところがあるから言葉がたまに理解できないというのは仕方ないのだけど。
うっかり、って何だよ。
そんなおちゃめキャラはいりません!そして「………気持ち悪」
「……黙れ。わざわざ貴様に言われなくても分かっている。」
風雅は失敗した、と思わんばかりに頬を赤く染めてそっぽを向いていた。
男のくせに女みたいな仕草をする。
風雅は元々、貴族だ。しかし三年前のこと。詳しいことは知らないが、家庭が崩壊するほどの事件があり、風雅の親達がを一家心中をしようと企んだのを知ったのち一人、家から逃げてきたそうだ。
だから姓は自ら名乗ろうともしない。家を出てきた身で風雅なりに責任を感じているのだろう。
――これ以上は知らない。自分には人の嫌な過去を根掘り葉掘り聞くという趣味は無い。誰だって話したくないことのひとつやふたつあるだろう。
・・・・・・自分にだってあるのだから。
「なら始めっから言うな」
小さくつぶやき、誠一郎はは風雅の隣に寝そべった。
作品名:文明開花〜櫻座物語〜 作家名:夏華