ありんこ探検隊
「『蟻の塔を組む[=積む]如し』蟻イチは、少しずつ怠りなく功を積んで大事業を成し遂げることができるでしょう」(「塔」は蟻塚)
「え…」
「私は、蟻イチとこの探検ができたことをずっと記憶に残しておくよ」
「蟻ーダに着いて行けて良かった」
二匹は、改めて握手をした。
「あの美しい方は、どこの巣から結婚飛行に飛び立たれたのだろう?」
「美しい羽がお日様に煌めいていましたね」
「同じ仲間のように見えた」
蟻イチは、再び空を見上げたが、もうその姿を見つけることはできなかった。
「卵を産むためのどこか安心できる場所へ降りられていると良いですね」
「もうあの美しい羽はお捨てになられてしまうんだね」
「ああ。だが我々が手助けなどできないんだ。おひとりで新たなコロニーを築かれる」
「わかっているさ」
少し強い口調の蟻イチだった。
「私たちを産んでくださったあの女王蟻様もきっと美しい羽をお持ちだったに違いない。
感謝して、しっかり尽くさないとな」
「蟻ッサは…いやなんでもない」
「なんだい?」
「蟻ッサは、本当は女王蟻になるよう食事を与えられていたんだ」
「それって」
「キミに…蟻ーダに会って、一緒に居たいからと。働き蟻として過ごしたいと女王蟻様のお世話をすることを決めたんだ」
「女王蟻様の近くって…不妊の状態になってしまうじゃないか」
「そうだよ。蟻ッサは、卵や赤子のお世話をしたかったらしいが、少しでも強く
女王蟻様のフェロモンを感じていられるようにとお傍にあがったんだ」
「そんなことって」
「だから、蟻ッサがいつも微笑んでいると嬉しいよ。この事は内緒だぞ!」
「ああ、話してくれてありがとう。ずっと大切に思うよ」