ありんこ探検隊
いよいよ出発が明日にと迫った。
先日、蟻ゴウと少年蟻たち、そして生まれた蛹を抱えたものたちも巣穴に戻っていた。
「では、みなさん。お忘れ物はないですか?」
期待に胸膨らせるもの。不安に俯くもの。友人を亡くし悲しむもの。住み慣れた巣穴を惜しむもの。胸中さまざまな思いを抱き、列を組んだ。
「蟻ーダ。出発の挨拶を」
誰もが、蟻ーダの言葉を待った。
照れくさくも、きりっとした態度で小石の壇上に蟻ーダは上がった。
「皆さんの代表で私たちは、六匹で探検に出かけました。途中さまざまな困難も小隊で
乗り越えました。出会った虫たちにも助けられました。でも今度は、皆さんが一緒です。
助け合い、かばい合い、励まし合って進みたいと思います。皆さんどうか協力してください。では……出発!」
歓声を上げ、隊列は、古巣から旅立った。
蟻ゴウは、一番後ろで みんなを見守った。
ひときわ大きく見えたのは自信なのだろうと蟻ーダは頼もしく感じた。
「蟻ーダ。蟻ゴウが、かっこよく見えるのは私の目が可笑しいのでしょうか?」
「いや、蟻イチのエアメガネは雲ってはいないよ」
蟻ーダは、笑った。
少し後ろで、女王蟻様に仕える蟻ッサを見ると、蟻ッサと目が合った。
蟻ッサの綺麗な瞳に早く、あの草原の風景を見せたくなった蟻ーダだった。
「蟻ーダ。どうかしたんですか?」
蟻イチが、覗き込むように蟻ーダを見た。
「疲れたのでしょうが、しっかりしてくださいね。皆、貴方を頼りにしている」
「ああ、大丈夫だ!でも蟻イチの判断があってのこと。宜しく頼むよ」
二匹は、改めて握手をした。