ありんこ探検隊
「実は、お兄様。出発されてから三つ星が輝いた夜、働き蟻達が騒いでいたのです」
蟻ーダたちは、蟻ッサの言葉を聞き漏らさないようにと頷きながら聞いた。
「翌日の午後のこと、とても暑かったので巣の中に風を通そうと窓を開けると、巣の周りに知らないものたちが現れて、誰だろうと思ったら、巣の中へ……もう、何がどうやら。逃げるにも互いにぶつかり合い、通路は混乱するばかり。私とほかの数名で女王蟻様の身を案じ、部屋へと向かいました。女王蟻様はご無事でございましたが、そのものたちの目的は、育児室でございました」
「蟻ッサ。まさかそいつらは、顔はどす黒く、赤色の身をしてたか?」
「蟻ッサちゃんそいつは、腹黒いヤツじゃなかった?」
蟻ゴウも加えて言った。
「いえ、お兄様。黒褐色の身をした…そう戦士のような大きな鎌のような大顎を持ち、次々に赤ちゃんや幼児を連れ去ったのです。もちろん戦いを挑んだものたちは勇敢でしたが、そのものたちの鎌に皆傷つき、命を落としたものもいます」
蟻ッサの声は、徐々に震えとともに消えかかりそうでした。
「恐い思いをしたのですね」
蟻ーダは蟻ッサを慰めるように肩を抱いた。
「蟻ーダさん……私は大丈夫。ご心配には及びません。ただ、この子たちがとても怯えているので、巣から離れました」
「長老の蟻衛門ジィは?」
蟻ゴウが聞いた。
「おジィ様はご無事で、巣においでになります。おジィ様のお部屋にはいかなかったようで」
蟻ッサはふと安堵の笑みを見せたので、蟻ーダは少し安心した。