ありんこ探検隊
「ここか?」
クロオオアリの蟻オは、蟻ーダたちを見下ろしながら頚を傾げた。
「六体じゃあな…。よし協力してやろう」
「協力?」
珍しくじっとしていた蟻ニイが乗り出してきた。
「ワシらが橋をかけてやる。そこを渡りなさい」
「そんなこと、してくれるのか?何か魂胆でも…」
「キミは、元気がいいねえ。同じ仲間だったら頼もしい。どうもワシらはカラばかりで」
蟻ニイは褒められたのか、ちょっと照れくさそうにした。
「じゃあ、ワシらも暇じゃない。さっそくかかるとしよう」
蟻オの指示で端にかがんだ蟻の上を通ってその先へ。
そしてまた次の蟻がその上を通ってその先へ。
見る見るクロオオアリの橋が出来上がっていく。
蟻ーダたちは、見惚れた。大きいからだのクロオオアリのその橋は丈夫で美しかった。
蟻オが、蟻ーダを促した。
「こんなことは滅多にせんよ。君たちの勇気ある行動を少し応援させてもらうだけさ」
「これほどのことをしていただいても私たちには、お返しするものがありません」
「なになに、気にせんでいい。同じ働くもの同士。だがワシらのことを覚えていて
くれれば嬉しいよ」
「はい。必ず、巣に帰ったら、みんなにも話して聞かせたいと思います」
「さ、早く渡ってくだされ」
蟻ーダたちは、順序良くその蟻の橋を渡った。
六匹は、口々に「ありがとう」と言いながら渡っていると、下から声がした。
「おまえは軽いな。しっかり食べろよ」
「おお、ちょっと重いぞ。そっと渡ってくれよ」
蟻ーダたちが渡りきると、オオクロアリの橋はまたもとに戻って行った。
溝のあちらとこちら、お互いに前足を振り合ってそれぞれの目指す方へと歩き始めた。