忘れていた風景
自分の絵の写真を改めて見てみた。
「さすがっすね!下の方が少し欠けてるかも。サインが映ってないものね。これ、二十五号だけど、ミーちゃんのアトリエにある本当のお父さんの絵は何号ですか?早く見たいなあと、思っているよ。ミーちゃんが描いたほかの絵も見せてね!」
伝言が二通きた。それに対して伝言を送った。
ミーちゃんからミニメールがきた。
「こっちのも二十五号。このサイズって、使う人は少ないかも。二十か、三十か、どっちかだよね。普通は。偶然の一致だろうけど、ちょっと焦った」
中野はキャンバスとしては最小のサムホールから四号までのサイズのものは滅多に使わなかった。現場では六号から十号が多い。その上のサイズとなると、十二号は使った記憶がない。十五号は或る程度使っただろうか。しかし、考えてみると、二十五号は昔から使う頻度が高かった。三十号は荷が重いと感じることがあり、二十号だと物足りない気がする。
人に贈ったものは六号が圧倒的に多かった。北海道や九州に帰るという人に、贈呈した。
昔、不倫関係になりそうになった若い人妻に贈ったのを思い出した。職場恋愛未遂。彼女は結婚してから二箇月という初々しい女性だった。里子が辞めた会社で、中野に仕事を教えてくれた先輩である。