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忘れていた風景

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「わーい!やった、やった」
 中野は裏声で云った。
「ギズモちゃん。あんたは後ろで寝てなさい」
「やだよ。ぼくは運転が好きなんだよ」
「そんなこと云ってると、この田舎町に棄ててしまうよ」
「ぼくは都会派だから田舎では暮らせないんだ。わかったよ」
美里はぬいぐるみを中野から受け取って自分の膝の上に置いた。

                 *

「この道さっき通った気がするわ。迷ったの?」
「ナビが真っ白だよ。この辺のデータが入ってないんだね」
殆ど家もなく、荒れた休耕地と、雑木林ばかりの地域だった。そんな中に神社や寺、農家、
パチンコ店、ラブホテルが、孤立して点在するという土地である。
「キツネにつままれたかな?どうも、そんなにおいがするぞ」
「わたしがキツネよ。もう二度とここから出られないわ」
「それは困ったな。こんなところで餓死するのは厭だな」
「どんなところでも、餓死するのは厭」
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード