忘れていた風景
「それこそあり得ないことよ。そんなことあるわけないじゃない」
「そうだね。あり得ないね。失言だったかな?」
「お父さん疲れたのね。運転代わる?」
「大丈夫。一日で二百五十キロ以上走ることもあるんだから、まだまだ平気だよ」
「だって、明日もお仕事で運転でしょう。心配になってきたわ」
「……ミーちゃんの好物はピザだと思う。違う?」
「そうよ。どこか美味しい店知ってるの?」
「昔働いていた店のピザは人気があったな。『シチリア』という店だった」
「知らないわ。今はないでしょ?」
「淘汰されたんだね。古い話だ」
「母もピザは好きだったの」
「そう?かなり好きだった?」
「ええ、だから私も好きになったのかも」
「そこが出口だね。高速から出ようか」
「もうすぐお昼ね。ピザのお店ないかな」
「出るよ。いい?」
「ええ、田舎町を探検しながら帰るのも愉しいような気がするわ」