忘れていた風景
「そんなことはないけど、このままずっと続くわけないでしょ?」
「そうだねぇ。まさか夫婦にはなれないだろうしね」
中野は思い切ってそう云ったのだった。
「夫婦でもなければ、恋人でもない関係ということは、齢の離れた友達?」
「あり得ないね。こっちは構わないというか、望むところかも知れないよ。でもねぇ。近いうちに破たんするだろうね」
「そういうことね。わたしも、まだおばさんじゃないしね。恋人ができる可能性は充分あるから……」
「まあ、いいよ。そうなったらそうなったで、執拗く追いまわしたりしないから。いい齢なんだからね」
「ごめんね。不適切な発言でした。いつまでも、仲のいいお友達で、お願いします」
「パソコンサイトって、会わないで、ことばだけの付き合いを続けて行くことが、理想かも知れないね」
「お金を貸したり借りたりすると、友だちじゃなくなってしまうのよね。そういうことだけは避けたいな」
「勿論……ところで、気を悪くされると困るけど、もしも私がミーちゃんの実の父親だったら、どうする?」