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忘れていた風景

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「さっき見たトラックに『アイドリング・ストップ宣言』っていうステッカーが貼ってあったんだけど、このトラックのは違うよ」と、中野が笑う。
「えっ!……『アイドル・ス・ト・リップ宣言』?何よこれ。おかしい!」
 美里も中野と共に笑った。
「平和な国なんだね、日本は。景気は悪いけど、戦争がないのはありがたいね」
「そうよね。あっ!また、変なの発見。昔のJALのマークかと思ったら……」
「真中の鶴がくわえたばこだ!」マークの下には「JAL」ではなく、「WAL」と書いてある。
ふたりでかなり笑った。
「ギズモちゃんも笑いなさい」
 中野は裏声で笑わなければならなかった。
「今回の旅行は、愉しかったわよ」
と、美里がしみじみと云った。
「極楽だったねぇ。親孝行の娘のおかげで、とんでもなく愉しい秋になったなぁ」
「もうそろそろ、お別れでしょう」
「まだ、三時間はかかると思うよ」
「そうじゃなくて、永遠の別れということよ」
「……ミーちゃんが重病人、ということ?」
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード