忘れていた風景
「こういうのも悪くないでしょ?」
美里も笑みを浮かべた。
「いい気分だね。高いんじゃない?」
「たまにはいいかなって、思ったの。露天風呂もあるのよ」
「屋上にあるのかな?」
「このお部屋専用の、露天風呂があるってきいたわ」
中野は呆気にとられた。
「凄いね。その障子のむこうかな?」
「そうかも。どう?気に入った?」
「戸惑うね。でも、嬉しいよ。一度はこういうところに泊まりたかった」
「そう?よかった」
「どうぞ。入ってください。旦那さま」
美里は機嫌が良くなってきた様子だ。
中野も本当に嬉しい気持ちになってきた。
「旦那さまか。じゃあ、入らせてもらうよ」
障子の奥は板の間で、籐の椅子とテーブルが置かれているそこも、結構広い。
その先の大きなガラス扉の奥の、バルコニー全体が庭園風の露天岩風呂だった。