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忘れていた風景

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紅葉の山は実景が美しくても描き上げてみるとただ派手な色彩が並ぶだけのつまらないものになったりする。決して容易い相手ではないのである。収拾がつかなくなって美里に笑われるのではないか。そんな危惧も生じて来る。
 しかし、二日間サイトの他人の日記ばかりを読んでコメントするだけで終わってしまうよりは絵を描いて過ごすほうが比較にならないくらいに愉しいことは間違いない。
おはようございます。今日は徹夜明けです。昨日も不景気でがっかりでした。デートの相手はいませんから、気分転換をしたいということもあるので紅葉ツアーに行きましょう。
描く場所はお任せします。集合場所も同様です。ちょっと待った!近場はまだきれいな紅葉になっていないので少し遠出したいですね。山奥でクマが出たら一緒に逃げましょう。
よろしくお願い致します。                         父より」
それを送信すると中野は台所へ行き、いつものようにウィスキーを水割りにして持って来た。
「マイフレさんが昨日、クマを見たそうです。今年は猛暑のせいで山に餌が少ないのだろうとのこと。わたしの車で行きますからクマが出てきたら車に入ってしまえば大丈夫でしょう。プロのかたに運転をお願いしてもいいかしら。ご希望の集合場所を教えてください。
明朝八時にそこまで行きます。                       娘より」
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード