忘れていた風景
「へえ、客じゃないよね」
「パソコンのサイトで知り合った美女で、まだ二十代だからね。若さをもらってるわけ」
美里は美女でもなかった。但し可愛いと、中野は思っていた。
洗剤をつけたブラシでマットを洗っている。
「腰を痛めないように気をつけてよ」
「大丈夫。プラトニックは腰使わないから」
ホースでマットの洗剤を洗い流した。
「そうか。それがいいね。俺もそうだけど、明日と明後日が公休じゃないの?」
マットをフェンスに立てかけてから、セームをバケツの水の中から出した。ホースで水をかけながらそれでフロントガラスから洗い始めた。
「まるで同じ出番表なんだね。でも、パソコンを眺めてるうちに終わっちゃうけどね」
「デートすればいいよ」
ほかの窓ガラスも洗い、ルーフやボンネットも洗う。
「金がないからね、いつも出してもらってる」
「そうかぁ。でも、そういう彼女がいたらいいね」
セームを絞ってからガラスの水分を拭き取って行き、内側からも拭いた。
「油絵をプレゼントすることになっててね」