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忘れていた風景

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 最後に十二人乗りのオフロード車で怪し気な魔宮を探検するアトラクションに挑戦した。探検の途中、ミイラに驚かされ、壁をはい回る虫に戦慄し、吹き矢などに脅威を感じた。美里は中野にしがみ着きながら何度も悲鳴をあげて笑った。オフロード車の動きがかなり複雑で、上下の揺さぶりや、急発進、急カーブの通過を繰り返しながら真っ暗な洞窟を駆け抜けるのを中野も怖がりながら愉しんだ。
「お店が混んでるからお土産はなしね。疲れたでしょう。お父さん」
 川にプロペラ式の水上機が接岸しているのを眺めながら美里が云った。
「さすがに疲れたね。若い人には勝てません」
 傾斜を少し登ってから古い橋を渡り、坂を下りながらまた暫く歩いて行った。
 外に出てモノレールに乗ると、今朝の不機嫌な父親の顔を思い出した。

     *

 電車の中で眠ってしまい、中野が眼覚めたのは、酔って居酒屋に迷い込んだ深夜に美里と別れたターミナル駅だった。美里に誘われてその駅の近くにある居酒屋に入った。二人は今日の日中のことについて暫く話しながら、生ビールを飲んでいた。
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード