忘れていた風景
「そういうことだね。誰もお兄さんなんて云ってくれないねぇ」
「寂しいね、おとうさん」
そう云うと美里は中野の左腕にしがみついてきた。
*
電車の駅から出ると、まずは車体の色が五色のモノレールに乗った。それが十分くらいで
下車する駅に着いた。
入り口でパスポートの料金を美里が支払ってくれた。
「ファストパスっていうのがあるの。長く行列するのは厭だものね。『時間指定優先入場チケット』というもので、知っていれば便利な小道具なのよ」
「へえ、ツウだねぇ」
「利用できるものは利用しなくっちゃ。これがここの攻略法の基本中の基本よ」
美里は得意気に云って笑った。
エントランスでパスポートを通すと美里は当日のショーのスケジュールや地図が載っているガイドマップを取った。
そのあと、彼女は着ぐるみのキャラクターたちと握手をして嬉しそうに笑った。