忘れていた風景
「意外に星は少ないなぁ」
「あっ!今の今までいた居酒屋が、もう閉まってる」
よく見ると中野は、そこが東京であることに気付いた。いつか、タクシーで来たことがある。
「ここは、そんなに遠いところでもないね。駅だって遠くないよ」
「そう?よかった。じゃあ、駅まで行きましょう」
駅までは歩いて五分だった。それぞれの住まいには、かろうじて電車で帰れる時刻だった。ホームに上がるとすぐに電車が来て、二十分程で乗り換え駅に着き、そこで別れることになった。
「じゃあ、ミニメール送るわ」
「わかった。じゃあ、さようなら」
「おやすみなさい」
その声はこれまでと少し違う印象だった。別れ際、美里は寂しさを顔に出したような印象だった。