忘れていた風景
「あるわよ。昔から絵を描いていたし……すみませーん」
急にミーちゃんは従業員を呼んだ。中野は刺身を口に入れた。
「はい。ご注文ですね?」
「すみません。わたしたち親子だって判りました?」
短髪の若い従業員は相当に悩んだ末、
「はい!お父さんと娘さんですね」
「ほら、やっぱり」
「君、調子がいいね」
中野は睨みつけた。
「あっ!思い違いかも。すみませーん」
奥へ逃げて行った。
「草食系だな……だってねぇ、そんなの当てにならないよ。昔は描いてなかったかも知れないし」
「昔から描いていたわけじゃないの?」
「どうだっけ。自分で云ったこと忘れてるよ」
「実際は描いてたんでしょ?」