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忘れていた風景

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カノンさんは実は大阪出身なのだと云ってから、河内男節を景気良く歌った。みんなで手拍子をしながらその歌をきいた。三振さんは得体の知れない踊りを始め、それがばか受けだった。阿波踊りと盆踊りをミックスしたような、即興の踊りだった。
 そのあとでお茶漬けが出された。
「みなさんお疲れ様でした。アッと云う間に、何と八時間が経とうとしています。
次会はまだ未定ですが、そのときも是非お集り頂いて、今回以上に盛り上がりたい
と思う次第であります」
 カリスマ氏が云い終わると、サイトの会員たちは今日のこと、次会のことに就いて語り合いながらお茶漬けをすすっていた。カリスマ氏がもう一度お礼のことばを述べると、全員が拍手をしながら立ち上がった。エレベーターで下りてから、駅までの道を酔った八人が歩いて行った。
 中野は不思議なことだと思った。今夜は仕事中に一度も思い出さなかった歌を歌い、話をした。人間にはもうひとつ別の脳があり、それは本人の意思とは無関係に勝手なことを考えているのではないか。そんなことを思った。
「たくちゃん。明日からまた頑張ってね」
作品名:忘れていた風景 作家名:マナーモード