忘れていた風景
にこやかな表情のその男に案内されて行った蒼い建物は、その辺りにしては質素に見える
六階建ての古そうなビルだった。
最上階のバイキングレストランには大勢の人々が訪れている。その中で男性二名、女性四名が、八人用のテーブルを囲んでいた。
カリスマボーイ氏と中野があいている席に就いた。
「わたしミーちゃんです。よろしくね。たくちゃんさんは白ワインで良かったかしら」
隣の女性に笑顔で尋ねられた。水色のワンピース。若いのだが、如何にもひとが善さそうである。
「はい。私は水よりも白ワインを必要とする人間です」
中野は微妙に笑いながら応えた。ミーちゃんは少し驚いたあとで笑った。
「それでは遅れた約一名が到着しましたので、改めてご挨拶を……」
「もういいよ挨拶は。たくちゃんは今日が初めてですね。三振男です。よろしく」
体格の良い男だった。
「わたしレモネードこと、須永です。よろしくお願いします」