忘れていた風景
「この絵、中野さんの絵に少し似てませんか?」
三振男氏が云った。背後に山並みのある田園風景だった。
「でもねえ、これは安っぽい絵ハガキ風ですよ。中野さんのは、もうひと味ある気がします」
と、須永さん。
「完成度の点で、こちらのほうが上です」
中野はそう云ったが、内心はつまらない絵だと思った。
「それぞれの持ち味が違うわけですからね、上も下もないでしょう」
と、カリスマ氏。
「そうですね。失言でした」
「尾瀬の湿原は描きましたか?」
と、ユウさん。
「ダジャレっぽい気がして不安ですが、行ったことはありますよ」
「ごめんなさい。シツゲン繋がりで思いついたの。でも、尾瀬は好きなんです」
「いいところですね。私も何度か行きました。人が多すぎなければいいんですが」
神風氏が云った。
「わたしも尾瀬は好きだわ。でも、昔はもっときれいだったのよね」
カノンさんはやや寂し気だった。