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遠距離恋愛のその先は…

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「もう終わりにしようか」
 雅也の口から出たその言葉を、優美は少し伏し目がちにして聞いていた。
 遠からず聞かされるだろうと覚悟はしていたけれど、だけどやっぱり聞きたくはなかった。
 できれば雅也の気が変わる何かを言いたかったけれど、言葉が見つからないまま、一旦開きかけた口をそのまま閉じてしまった。
 冗談だよと笑って欲しい――その思いで胸はいっぱいだった。
 しかし雅也は、何も返事をしないでただ俯いている優美の態度に、次第に苛立ちを感じてきた。
「だって仕方ないだろう? 元々無理だったんだよ! 遠距離なんて」
「でも……」
 優美は、まだ愛してるのに…と続けたかったが、言っても無駄だろうとわかっていた。
 いきなりここで会おうと雅也からのメールが届いた時、すでに雅也の気持ちが決まっていることを感じていた。
 このレトロなカフェは、若者たちがよく利用する、今流行りの人が多くてざわざわしたフランチャイズの店と違って客も少ないし、本当にコーヒーを愛するわずかな常連客が、ゆったり流れるJAZZを聴きながら静かに時を過ごす場所だった。
 若者には不似合いだとも思えるような店だけど、ここが好きだからと、初めてのデートの時に雅也が連れてきてくれた。

 初めて出逢ったあの日から三年。
 雅也との沢山の思い出を大切にしてきたのに……。そう思うといきなり涙がぽとりと落ちた。
 そしてそれは、関を切ったように溢れては落ちた。
「お、おい! 泣くなよ」
 雅也は慌てて声をかけると、すぐさま周囲を見回した。
「俺が泣かしたみたいじゃんか」
 顔を上げた優美の目には、困った顔の雅也が見えた。
「ごめん」
 優美は囁くように呟いた。
「とにかく、もう泣くなよな。泣いたってしょうがないんだから」
 そう言うと雅也は目の前のコーヒーをぐいっと飲み干し、
「じゃあ俺行くから」と、急いで席立ち、レジを済ますと優美を振り返ることもなく店を出て行ってしまった。
 残された優美はハンカチで涙を拭い、一つ大きく息をつくと、冷めたコーヒーカップに手を伸ばした。