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RED+DATE+BOOK005

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ふわふわのタオルを受け取って汗を拭く。

あれ?ここにいていいのかな?なんて思ったが笑っているからよしとする。

「背伸びた?」

「分かる?桜先輩!俺1センチくらい伸びたんだ!!」

桜先輩は俺より大分背が低いのによく気づく。

「うん。あれからちょっと髪も伸びたね。」

襟足を触ってふふ、って笑う彼は以前見たときより綺麗になってた。

「桜先輩こそ綺麗になってる。」

「亮・・・。」

桜花の瞳がるん、と輝く。

「あー。お邪魔の所悪いねんけど・・・。」

間に入るように宮登場。

桜はサッと表情を変えた。

先ほどとは一変して冷たい目で侵入者を見る。


::::::::::::


「あ。宮先輩、紹介します!羽沢桜花先輩。桜先輩、宮辰郎先輩。桜先輩と同い年だよ。」

「どうも、羽沢桜花です。」

「こんちは、宮辰郎です。んで?なんでその桜先輩がここにおんねん?」

「お前にさくらなんて気安く呼ばれたくないんだけど。」

ピシッと空気が凍ったのは気のせいではないのであろう。

「俺をさくら、って呼んでいいのは俺が許可した奴だけだよ。初対面のアンタに許可を出した覚えはないんだけど。」

ピキピキと宮の額に青筋が浮かぶ。

「そりゃー失礼しました。とっとと自分の学校がいるコートに戻ってくれませんかね?」

「久しぶりの再会も満足にさせてくれないなんて酷い学校に来たんだね。あ、はい亮ちゃん。」

そう言って桜花は亮にスポーツドリンクを手渡す。

亮は、ありがとう、と笑ってみたが不穏な空気にその笑顔は引きつる。

「再会の時間は後でだってあるんやろ?第一、そんな事は自分の奴等にやれや。」

「俺は、亮ちゃんにしかやらないって決めてるから。悪い?」

悪いと聞かれれば悪くはないのだろうが言い方が悪い。

宮の青筋は先ほどより確実に増えている。

「おまえ・・・!」

そして次の行動も彼のリミットゲージを確実に増加させた。

「あ、こぼれてるよ。」

そう言って桜花は亮の口の端から滴る液体を己の舌で舐め取った。

そして其のまま桜花は亮の唇に唇を重ねる。

「ん・・・。」

ゴクンと亮の喉がなって声が漏れる。

くちゅり、という水音は宮にしか聞かれなかったであろうがそれは問題ではない。

桜花は熱の篭った目で見開いている新緑の瞳を見た。

ゆっくりと瞬きをして唇を離す。

「ふぁ・・・」

なんて鼻にかかった声を出して亮は息を吸った。

「おおおお・・・お前等なにしとんねんっっっ!!!」

宮の叫び声が響く。

「何って?見てわかんないの?」

シレッとそう言って、ねぇ?と亮に笑いかける桜花。

亮はさして気にもしてないようで再びこくりとスポーツドリンクを飲む。

「見てわかんないの?じゃねーだろうがっっ!!」



::::::::::
拳を握りしめてぶるぶると震えながら宮は叫ぶ。

「お前には常識っつーもんがあらへんのか!?」

「あるよ。っていうか、そんなにぎゃーぎゃー騒ぐことなの?ここはそういうの日常茶飯事だって聞いたんだけど。」

まったく悪気が無い顔で五月蝿い、と耳に手を当てながら見下すように桜花は宮を見る。

「それは部活外や!草っ!お前も何ぼーっとしてんねん!!青木とのキス写が回ったばっかりだろうが!!」

「はぁ。そーっすね。」

亮は亮で気の抜けた返事を返す。

桜先輩とキスするのも久しぶりだなーとかやっぱ公共の場でキスすると怒られるんだなーとかでも学校では別にいいんじゃないのかーなんて思っているのは宮には分からない。

「・・・アオキとのキス写?青木って青木春?そんなの聞いてない。」

「つい一昨日の事や。第一明星のお前が知らないのは当たり前やろ!」

桜花はギリと親指を噛んでボソッと「あの野郎、林間学校だからってサボりやがって・・・。」と言った。

幸か不幸か亮や宮は聞こえなかったようだが。

「亮、本当にキスされたんだ?」

桜花は亮に向き直ると真剣な顔で尋ねた。

「うん。でも桜先輩・・・。」

「分かってるよ。亮が笑ってるから。強くなったね。」

その言葉に亮はぎこちない表情で笑う。

「だけど、俺の亮ちゃんに手を出したのは許せないな。青木春って誰?」

「紹介するよ!」

「アホかっ!喜ぶところじゃねぇだろ!!」

バシッと小気味よい音が響く。

「ちょっと・・・お前何してんの?」

一気に冷凍室に押し込まれたような空気に変わる。

びゅおおおお、と桜花の後ろにブリザードが吹き荒れているのは気のせいだろうか。

グッと桜花で右手に力をいれる。

「ちょ・・・桜先輩ストップ!!」

亮は慌てて桜の腕を掴む。

「亮、離せよ。アイツにも一発食らわす。」

「ダメだって!俺なんともないし。」

宮は氷点下の温度にブルと体を震わせながら何かいおうとしたがこれ以上温度を下げる勇気もなかった。

「はい、桜先輩。帰るッスよ。」

と、そこに侵入者もとい新入者の声がふってくる。

「恵!」

恵はちらと亮をみて口をばーかと形どる。


:::::



「どうも、世話かけました。」

ぺこと宮にお辞儀をしながら桜を引っ張る恵。

「恵一発殴ってから!」

「後でやってくださいよ。和哉先輩怒ってるんスから。」

ぎゃあぎゃあいいながら二人はコートに戻っていった。







「じゃあ、今日の練習はここまで。合宿は今日からなんだけど・・・多分実質は明日からになりそうだから此処で解散。お疲れ様。」

通常の時間より5時間ほど早く終わった練習。

それでも軽くゲームをしたりと、お互いの交流も出来た。

若干二名を除いては既に笑いながら話合えるようになっていた。

亮は聡に感謝を含めて「お疲れ様でしたっ!」と思い切りお辞儀をするといつもやっている自主練習をすることもなく嬉しそうに駆け出していった。

「犬みたいやな・・・。」

もし、彼に耳と尻尾が生えていたら千切れんばかりに振られていたのであろう。

宮の呟きに篠宮の生徒は数人うんうん、とうなずく。

亮は体育館を出て廊下に入るとギャラリーへと続く階段を一気に掻き上がった。

「みんなっ!!!」

興奮しているのであろういつもの声より1オクターブ高くなった音が体育館に響く。

わっ、とそれに歓喜したのは翠、と呼ばれた親衛隊である。

「お元気でしたか翠?」

「うん!みんなは?みんなは元気だった?」

そう言えばしーんとなってしまう。

「え・・・えっと・・・。」

亮は俯いてしまった彼等にどうしようと視線を彷徨わせた。

「翠が行ってしまわれたから前の通りとは行きませんがそれなりに頑張っているんですよ。」

微笑みながら話すのは山西信二。

「翠・・・会いたかったです。」

一人がポツンとそう零せば一人、また一人と広がって行く。

「翠がいないと静かで・・・寂しくて・・・。」

「数日間は学校が沈んだ状態でした・・・。」

所々ではすすり泣く声まで聞こえてくる。


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「お会いしたかった・・・。」

「会いたかったです。」

「だから貴方に会いに来たんです。」

「みんな・・・。」
作品名:RED+DATE+BOOK005 作家名:笹色紅