RED+DATE+BOOK005
「ね。普通親衛隊なんて転校しちゃったら解散するもんだと思ってたんだけど・・・。ま、亮も嬉しそうだったしいいか。」
「今まで見たこともねぇ笑顔振りまいてたなアイツ。」
「そうだね。ちょっと妬けるよね。」
チラと聡は周りにいる部員を見渡す。
春は遠藤とストレッチを再開していた。
「まぁ、この学校が学校だから仕方ないねん。」
「うん。そうだね。」
それでも亮が来た時よりは大分マシになった。
彼が少しずつ変えていった。
「ぶちょー!案内してきました!」
タッタッと駆け足で戻ってきた亮。
「あれ?もっと話していてよかったのに。」
「いえ、だって部活中ですし!あの・・・。」
どうして?という表情に宮がニヤニヤした。
「びびったやろ?サプライズ成功やな!」
「じゃあみんな知っていて?」
「そう、亮を驚かそうって。一週間の合同合宿を予定してたんだ。」
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「一週間も!!!?って・・・え?合宿?」
「うん。」
聞いてねぇ!!!!
亮は思わず頭を抱えた。
「ちゃんと学園長には許可を取ってあるよ。明星の人たちには寮の大広間で生活してもらうつもりなんだ。」
「え?じゃあ俺達は・・・?」
「お前だけが問題やねん。」
「へ?」
「実はバレー部はみんな寮に入ってるんだ。だから寝床はあるんだよ。だからね、亮が泊まりたかったら明星の人達と一緒でもいいんだけど・・・それはいきなりだから・・・」
「通いたいって思ったら通ってもいいねん。」
「合宿なんていっても終わる練習時間は変わらないしね。家から通っても問題はないよ。」
確かにいきなり一週間も泊まれといわれてもソレはきつい。
なんたって杏那と一週間会えないって事になる。
「じゃ・・・じゃあ俺、明後日から一緒に参加していいですか?」
「勿論。あ、上にいる彼等は今日だけしかいないみたいだから今日は早く終わるよ。」
「っはい!ありがとうございます!!」
翠のみんなは今日だけ・・・でも!今日だけでもみんなといれる!!
「春っ!ごめんな途中で抜けちゃって・・・!」
代わりにやってくれてた遠藤先輩にお礼を言い交代する。
「いいよ。ギャラリーにいるのも亮の前の学校の人達?」
「うん!俺のし・・・親衛隊なんだ。翠って言うんだけど・・・。」
くっは!自分で親衛隊なんていうのは物凄く照れるな!
「じゃあ、桜先輩もいるんだね。」
「おう!桜先輩は・・・。」
見上げて翠のみんなを見渡すが桜色の髪が見当たらない。
「あれ?やまにゃんはいんのに・・・。」
やまにゃん事、山西信二[ヤマニシシンジ]は翠の副隊長だ。
彼は亮の視線に気づくと黒縁のフレームの奥でにっこり微笑んだ。
それにつられて亮もえへらっと笑う。
彼は背丈が180cm以上あり外見はインテリな青年という言葉がぴったりだが中身はポエムとか書いちゃうロマンチストだ。
長身だが威圧感が全然感じられないのである。
亮が笑いかければポポと赤くなるのもまだ直っていないようだった。
ありありと彼等の記憶が思い出されて笑ってしまう。
嬉しい、嬉しい、嬉しい!
亮の頭はその一言に染まっていた。
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「あ。あそこにいるのが桜先輩だよ。」
桜先輩はバレー部部員とともに出てきた。
右手にはドリンクが入っているカゴを持っている。
「マネージャーなの?」
「いや・・・俺がいたときはまだ・・・。」
桜先輩はよく練習にも着てたし俺にタオルとかドリンクとかは出してくれたけど・・・。
確か俺だけにだったような気がする。
正式なマネージャーになったのか?
「あ、春!あの金髪が俺の幼馴染の佐藤恵だよ。んでぶちょーと話してるのが和哉先輩。和哉先輩は明星の部長。あと、あの身長高くて・・・」
名前を挙げていって紹介する。
おそらく後で紹介はあると思うのだけど春達は恵と電話で話したって言ってたし。
「後で春達のところも紹介したいな!」
恵たちにも俺の友達です!ってちゃんと!
「うん。よろしくね。」
春はにっこり笑った。
恒例の7kmランニングの最中、宮が亮をこずいた。
「なぁ、明星は男子校だよな?」
「そうっすよ。」
「マネは女やろ?」
「・・・・・・。」
どうやら宮は桜花を女だと思ったらしい。
そこに聡が口をはさむ。
「宮、あれが桜だよ。羽沢桜花。ほら、前に電話したときの・・・。」
「はぁ!!?アレが男!!?それも超性格悪いアイツかっ!?」
そう、彼等は顔を見るなどの認識はないものの以前電話で話した時がある。
「あの『友達になるな』とかほざいたやつやろ!」
亮はあの後、春や楓、そして桜花や恵から互いに電話したとは聞いていたがそんな事を桜花が言ったのは知らなかった。
そして、桜先輩らしいと思わず苦笑してしまう。
「でも、桜先輩は優しいし、凄い人ですよ。」
「確かに統率力はあるよね。あれだけの人数ちゃんと管理してるし。」
きょー様はカリスマ性があるって言ってたが亮が考えるのに当てはまるのは桜花だ。
「はい。桜先輩は自分の色だって統率してるし俺の色だってちゃんとやってくれてます。」
「翠だっけ?明星は色なの?」
「ええ。俺の色は翠、『スイ』って言われてて後は・・・桜先輩とか他の明星の人たちや・・・あ!和哉先輩とあの金髪にも色があります。」
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「ふーん。で?お前のはどんくらいやねん?」
「どのくらいって何がですか?」
「規模・・・この学園じゃ葵が一番。まぁ・・・アイツも京様派みたいなもんだけどな。」
「へー・・・かいちょーが・・・。俺は・・・多分俺も一番です。」
「は?」
「本当は桜先輩の方が多いんス・・・でも桜先輩俺の色の隊長だから吸収合併みたいな感じで。」
そう、それは俺と桜先輩が出会って間も無く決まった事。
いや、桜先輩が決めた事。
「桜先輩はモテモテなんス。通るとみんな花とか持って来てたな〜。」
ああ、いい思い出だ。
「お前・・・妬まれる事なかったんか?」
「え?」
「そんなに人気な奴がお前の親衛隊の隊長になって・・・。」
「ああ。だって桜先輩言ってたから・・・もし誰かに迷惑かけるような事があれば大嫌いになるって。」
「は?大嫌い?」
「ん。俺にはそう言ってた・・・でも大変だったと思います。ここの学校来て初めて考えた事だったけど。」
俺は、彼に守られていたんだ。
彼だけじゃなく他の人にも。
「ラスト5周でーす。」
遠藤先輩がストップウオッチでタイムを計りながらそう告げる。
亮はラストスパートをかける為にそれ以上喋ることは無かった。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
体育館をゆっくり歩きながら呼吸を整える。
半コートずつ使っているのでいつもより距離が長く感じた。
もう一度ストレッチをして状態を下げていれば視界にシューズが入った。
顔を上げれば
「桜先輩!」
「はい、亮ちゃん。」
にこにことタオルを差し出す桜花。
「えあ?ありがとう。」
作品名:RED+DATE+BOOK005 作家名:笹色紅