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RED+DATE+BOOK005

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「いえいえ、此方こそありがとうございます。」

ばあちゃんも手を重ねて頭を下げた。





:::::::::::::::::::






AM8:30

篠宮学園高等部第一体育館

「うー・・・!もうちょい・・・っっ・・・。」

「まだいく?」

「んっ・・・。」

ぐぃーッと前に手を伸ばしながら自分のつま先に指を伸ばす。

大きい手が背中をゆっくりおしてそれに合わせて息を吐く。

「ふぅー。」

指先がつま先を触れた所で亮は息を止めた。

「いち、に、さん・・・。」

ゆっくりと春が数を数える。

そのまま十秒。

「はぁっ!」

上体を起こして息を吸った。

「じゃ、次股関節よろしく。」

足の裏をくっつけて膝の上を押してもらう。

うう・・・!!

こそいばゆい!!!

「いくよ。」

太ももが床に付く。

「亮、股関節は柔らかいよね。」

「春には負けるって。」

笑いながら彼等、亮と春がストレッチをする。

「それにしても・・・夏休みだって言うのに暇人なのか?」

いつもより人数は少ないもののギャラリーには数名の人がいる。

バレー部部員には一応あのメールの事は説明したが(事故だとか何とかで)ふい、と亮がギャラリーを見ると数人はキッときつい目で亮を見た。

それに苦笑。

「暇・・・なのかな?分からないけど楓も帰ってきたら顔出すって言ってた。」

「あ?そうなんだ。」

楓がくるのは嬉しいなんて思ってしまうのは他の人に失礼だろうか。

二人がそんな事を話している同時刻。

場所、篠宮学園高等部正門付近。

「おはよう。」

「おはよう。」

篠宮学園生徒二名。

「君は今回あっちに滞在しなかったのかい?」

「うん。僕は今年は軽井沢に行く予定だから。君こそ休みはどんな予定?」

「僕は・・・あ、バスが来たよ。」

大型バスが正門をゆっくり通っていく。

そのバスに乗っていた金髪のある人物が外にいる生徒二人に気づきにっこりと笑って手を振った。

篠宮の生徒も反射的に手を上げる。

直ぐにバスは隣を抜けて行った。

「か・・・かっこよかったね今の人。」

「うん。他校の人だよね?」

「第一体育館の方に行ったよ。」

「行ってみる?」

「・・・行ってみよう。」



::::::::::::


AM8:40

場所戻りまして篠宮学園高等部第一体育館。

「じゃー次春の番。」

よいしょって立ち上がって春の後ろに回る。

春の背中に両手を置いてゆっくり押す。

「そういや遠藤先輩は?」

遠藤先輩はバレー部のマネージャーだ。

春はすっと状態を前に倒して息を長く吐く。

「朝からいないよね〜?どうしたのかな?」

亮なんかより全然柔らかい彼はぴたと頭を膝につけられる。

「いーち、にぃー・・・。」

ガラガラと体育館の扉が開かれる。

「さーん。あー遠藤先輩いた。」

外から入ってきたのはいないと思っていた遠藤先輩だ。

外はカラッと晴れていてサンサンと太陽が輝く。

「よーん・・・え?」

外から見えたシルエットは一人じゃなかった。

大きく開かれた扉から中に入ってきた人物達。

次々と人が入って一列に並んでいく。

ピタと乱れることなく並んだ一番端の人物がよく通る声を発した。

「明星高校バレー部。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いしますっ!」

バッと頭を下げる面々。

亮は春の背中から手を離して呆然と立ち尽くしていた。

そこには明星高校の、亮のよく見知った人物達がいた。


:::::::::::::::::


ポカンと立ちつくした亮は目の前の光景にやはりついていけなかった。

聡が短く歓迎の言葉を言って「よろしくお願いします。」とそれに続くように他の部員も頭を下げたのだが亮だけは立ち尽くしていた。

「亮、大丈夫?」

春が目の前で手を振っている。

それに一応頷いて、未だ混乱した頭で周りを見渡す。

亮と目があった篠宮のバレー部部員は笑ったり頷いたりして見せた。

「亮、明星の人たちを更衣室まで案内してくれるかな?」

聡が笑顔でそう言ってから初めて身体にグッと力をいれた。

「はいっっ!!!!」

ぱぁぁと笑顔がこぼれる。

頭が考えるより先に亮は駆け出していた。

「みんなぁー!!!」

大きく手を開いてる和哉先輩にアタック。

難なく受け止めた彼は緑色の頭を優しく撫でた。

「久しぶりだな。」

「お久しぶりっス!和哉先輩!」

「うわ〜!お前相変わらずちっちぇえな!」

「うるせーよ!恵!」

「元気にしてた〜?」

「うん!たもっちゃんは元気?」

「つーかなんでいんの?え?夢?」

「夢じゃねーよ。」

ぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜられながら手厚い歓迎を受ける。

むしろ歓迎するのは亮なのだがどう見ても亮は明星高校バレー部部員から歓迎を受けていた。

「ちゃんと食ってる?」

抱きしめられてそれに笑う。

「食ってますよ!毎日牛乳だって飲んでます!」

亮は明星バレー部の中では一番身長が低いので囲まれてしまえば外からは見えない。

「でも軽いままだよな。」

ひょいと持ち上げられて笑う。

外から見れば緑の髪がひょこひょこ見え隠れするのだろう。

「これでもちょっとは筋肉ついたってーの!」

彼等はとても喜んでいた。

そんな感動の再開を楽しんでいる彼等に凛とした声が響く。

「ちょっと退いてくんない?」

入り口で騒いでいたバレー部部員にはっきりと聞こえた声。

え?、と亮が其方に目を向けると桃色の髪を揺らせた人物が入ってきた。

それに続くように次々と明星高校の制服を着た人物たちが入ってくる。

四十名ほどが並び終わった後に先頭に入ってきた人物が口を開いた。


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「明星高校、所属翠。見学の許可を頂きました!篠宮学園高等部バレー部の皆様よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。」

お辞儀の角度から声までピタと合わせた彼等。

亮は息を飲んで彼等を見守った。

まさか、

まさか!!

「亮ちゃん、久しぶりだね。」

羽沢桜花が亮に向かって笑う。

「桜先輩・・・すい・・・まで・・・。」

亮は感激のあまり目元に涙が浮かんだ。

びっくりしたからかもしれない。

「みんな、沢山話したいことはあるけど・・・ここじゃ邪魔になるからギャラリーに移動するね。」

そう言うと彼等は二階へあがるために移動していった。

すれ違う彼等は亮と同じように涙を溜めていたり、既に泣いてる人もいた。

「俺たちも案内してくれるか?」

和哉の声に亮はごしと目元をぬぐい「はい!」と大きな声で返事をした。








「うわ〜。凄いね〜。」

聡はギャラリーを眺めてそう呟く。

「あいつ・・・人気者だったんやな〜。」

同じように宮も感嘆した。

彼等はギャラリーに上がり座ると大人しくしていた。

数人がハンカチで目元を拭いていたがみんな笑顔だ。

明らかに明星高校の生徒が多くなったのでそれまでいた篠宮の生徒は端によっていきなり入ってきた新参者をひそひそと何か囁きながら見ていた。
作品名:RED+DATE+BOOK005 作家名:笹色紅