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RED+DATE+BOOK005

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「・・・うん。」

「あー腹減ったー。」

たもっちゃんは腹を擦りながら食堂に入っていく。

食堂は「食堂」というより「レストラン」に近い。

学食と同じ様に白い机とイスが並べられてある。

学食収縮版といった感じだ。

しかし奥には畳の部屋がある。

「どうすんのこれ?」

「お前自分の学校だろうが。」

「だから初めて来たんだっつーの!」

「学校でバイキングで食べ放題とかどんだけぇ〜。」

「たもっちゃんもうそのネタ古いって。」

ずらっと光り輝く銀のプレートに乗った料理。

「うわー!どれにすっかな!!!」

「お前大食いは変わってねぇの?」

「んー。中学の頃よりは多分マシ。」

ひょいひょいと皿に盛っていく。

:::::::::::::

「こっちでちゃんと食えてるのかぁ?」

たもっちゃんが俺を見ながら言う。

アンタ、そんなに俺の頭見なくてもよくねぇ?

そりゃあ身長はあんま伸びてないけどよ。

「心配しなくても食えてるよ。」

「こっちにも弁当くれる奴いんの?お前嫌われ者なんだろ?」

事情を知ってる恵がいけしゃあしゃあと聞いてくる。

因みに、中学高校の俺の食料元はみんながくれる弁当。

朝に3つほど貰い昼に5つほど貰う。

マジみんなに感謝だ。

「やっぱ嫌われてるのか!羽沢がキレた日にみんなで話したんだけどやっぱ虐められっ子なんだな!」

たもっちゃんそれを俺に聞くのかよっ!?

俺はよけいな事を!とキッと恵を睨んで

「別、に!」

と少々乱暴に返した。

俺はたんと皿に料理を盛ると席に着いた。

同時に恵が俺の横に、たもっちゃんが俺の前に座る。

「いただきます!」

手を合わせて、はい食事!!

「食欲は変わってねぇわけな。お前本当大丈夫か?」

俺のに比べて二人の皿にはそんなに乗ってない。

補足だが、決して二人の食が細いわけではない。

亮と比べるとそうしても少なく見えてしまうだけだ。

「はいほーぶはって!はってほれまひにちふまひもんふってふし!」

「へー。」

「え?恵今の聞き取れたのか?訳しろ訳。」

「『大丈夫だって!だって俺、毎日美味いもん食ってるし!』先輩、コイツの実家そうとう金持ちらしいから食い物には困ってない見たいッスよ。」

「ほうほう!」

飲み込みながら頷けばたもっちゃんはその割には・・・と俺の身長を(以下略)あえてスルーしておいた。

「ごちそうさまでした!じゃあ二杯目お代わりしてきます!」

「はぁ!?お前まだ食うのかよ?」

恵の声を背中で聞いて再びバイキングの前に移動すればドアから入ってくる団体。

「あ、じゅんぺー!!」

十五人ほどの中に見知った人物を発見して片手を挙げる。

「……おう。」

純平はやっぱりという顔をして手を挙げた。

「え?何で?じゅんぺーって実家から通いだよな?」

「お前と同じ、陸部の合宿。」

俺は純平と並んで再び料理をほいほい皿に載せていく。

「へー!いつまでやんの?」

「来週。で、やっぱあのバレー部はお前のいた学校なのか?」

「うん!!あ!!紹介する!!」

「食ってからでいいって。お前そんなに食うのか?」

「二杯目だからちょっとにしたんだけど。」

「……腹壊すなよ。」

「おう!」

席に戻れば恵がじっと陸上部の方をみていた。

「アイツ俺の友達。」

嬉々として言えば恵は少し目を細めた後に俺の方を向いた。

それが、なんだかとても鋭い眼差しで思わず息を飲んだ。

しかし直ぐに悪戯そうに唇を歪める。

「お前、友達いたんだ?」

ニヤリと笑った顔はいつもと同じ顔。

「ええ!いますよ!楓だろ、春だろ純平に可奈人、松橋の双子に〜「で、アイツの名前は?」

俺がつらつらと友達の名前を挙げて言ってるのにそれを遮る恵。

「じゅんぺー。木野下純平、だけど…どうかしたか?」

「いや、お前に付き合ってやってるなんて俺位いい奴なんだろうなーと思ってよ。」

「この際だから言っておきますが、めぐみちゃんに嫌々ながらも可哀想だと思って付き合ってあげているのはこの俺様であってむしろお前はそれを俺様に感謝しないと思うのですが。」

「お前とうとう恵って漢字も読めなくなったのか。はぁー。何年間も世話してやったのに…やっぱ地球外生命体はどうしようもねぇか。なぁ、エイリアン?」

「エイリアンとか眼ぇおかしいんじゃねぇの?頭までじゃなく眼まで腐ったか?」

「お前なんか中身がカラだから腐るものもねぇよな。」

「なんだとぉぉ!?」

「お、やんのか?」

ガタガタと二人で立ち上がる。

それを止めたのは暢気なたもっちゃんの声。

「なぁなぁ、入り口に可愛い子ちゃんがいんだけど、亮の友達か?」

「え?」

たもっちゃんが見ているほうに顔を向ける。

「楓っ!!」

きょろきょろと入り口で首を振っていたのは綾瀬楓。

声をかければぱぁ、と明るくなり此方に歩いてきた。

「亮!久しぶり!!」

「久しぶりっ!たもっちゃん、俺の友達の楓!」

「どうも、亮、お前にはもったいない位可愛い友達だな。」

「此方保先輩。えーっと・・・明星高校が合宿に来てるってのは知ってる?」

「うん。桜先輩からメールで聞いたよ。」

え?楓と桜先輩ってメル友なのか!?

初耳なんだけど!!

俺の知らないところが繋がりまくってんだけど。

「で、こっちが恵な。」

指をさせば楓はペコリと恵に頭を下げた。

「あの時は本当にありがとうございました。」

「いえいえ、此方こそ愚息がお世話になりまして。」

「おい、いつから俺はお前の息子になったんだよ?」

「お前みたいな出来の悪い子供はいらねぇけどな。綾瀬クン・・・も寮なのか?」

「はい。春、はもうご存知でしょうか?彼と一緒の部屋です。」

「え!?そうなの!?」

あらま!其れは初耳なんだけど!

「一年は二人部屋なんだ。」

「へー!あ、楓はもう飯食ったの?」

「うん。食べてから来たんだ。部屋に行く前に友達に聞いたら明星の方々は食事してるって言ってたから。」

「今日から俺も寮にお世話になるから!よろしくな!!」

「うん。よろしく。」

席を立って食器を片付ける。

勿論ご馳走様は忘れない。

「楓、もう部屋に行く?」

「うん。」

「悪いけど春に風呂入ろうって伝えておいてくんねぇ?つーか・・・春はこっちで食べないのか?」

「春は部屋で食べてると思うよ。部屋にキッチンがあるんだけどね、春は結構自分で作るから。」


::::::::::::::::::::::

部屋にキッチンがあるのか。

へー。って頷けるくらいに生活の違いに慣れている自分に苦笑だ。

「じゃあ春に言っておくね。」

「よろしくー!」



席を立って食堂を出る。

美味かった!マジ美味かった!なんといってもお腹いっぱいまで食べられるのが幸せ。

「おい亮。楓ちゃん羽沢につかまってるぞ。」

たもっちゃんの声に振り向けば俺らが寝泊りする部屋の前で桜先輩と楓が話してるのが見えた。

「やべぇんじゃねぇのか?羽沢はこっちの奴等に好戦的だぞ?」
作品名:RED+DATE+BOOK005 作家名:笹色紅