RED+DATE+BOOK04
「なぁ、なんで今更言ったんだ?学校でも言えただろ?」
そう言えば可奈人は頬を赤くして困ったような情けないような顔をした。
何?俺そんな顔させる事いったっけ?
「い・・・言いだせなかったんだ。」
「なんで?」
ハンカチ無くしちゃったくらいだろ。
そりゃ人のモン無くしたら言いにくいとは思うけど大事な物だったら貸さないし。そんなに大変な事か?
「さ・・・齋藤君に嫌われたくなかったんだ。」
「は?」
「齋藤君の事・・・君のクラスメートに聞いたら僕どうしたらいいのか・・・分からなくて。でもせめて同じものを見つけてから返そうって・・・。」
「え?何?なんでどうしたらいいのか・・・って。俺の事聞いた?」
なんだ?クラスメートは何ていったんだ?どうしたらいいの・・・ってそんなに考えることいったのか?
「言っておくけど・・・俺ハンカチ無くされた位で怒るほど心狭くねぇぞ、それに知らない奴に貸したらそんなの返って来なくても大丈夫なものだろ?」
「違うんだ。君の事悪く言う人なんていなかった。みんな・・・僕達の考え方とは違うって・・・。」
「違う?考え方なんて人それぞれだろ?」
また、違う?
「そうじゃなくて・・・えっと・・・齋藤君は見返りはいらないの?」
「見返り?」
「そう。人を助けたら助けられた方から何か欲しくないの?」
「別に。だって助けんのは俺の勝手でしたことだし・・・そりゃありがとうの一つもなかったらちょっとって思うかもしれねぇけどそんなのの為の行動なんてしねぇだろ。」
「そっか・・・。」
「お前は違うのか?」
「・・・・・・・・・。」
黙ってしまった可奈人。
それに言いようのない不安を感じた。
「俺・・・違うのか?」
「え?」
「そりゃ、お前等とは生きてきた環境は違う。考え方も一般よりはやっぱり違う・・・だけど・・・。」
俺はそれでも
「でも、俺は近く感じる。俺・・・・・・だけなのかな?」
カランとグラスの氷がなる。
つ・・・と流れた水滴が涙のように思えた。
「多分・・・君になりたいんだ。」
可奈人は遠くを見る様に話し出した。
「・・・・・・。」
「僕達には出来ない事をするから。だから皆戸惑う。だけど皆本当は分かってる。」
「出来ない事?」
それに可奈人はニコリと笑った。
「それは自分で聞いてみたほうがいいと思います。」
「・・・・・・・・・。」
浮かんだのは楓の笑顔。
そして泣きそうな顔。
謝って、ちゃんと聞いてみよう。
それで、歩み寄れたら最高だ。
「それより、俺に嫌われたくなかったって?」
「え!?え・・・っと・・・。」
一瞬で赤くなる可奈人の顔。
「俺も色々誤解してたみたいだし・・・。別に嫌いにならねーよ。」
よかった。今、目の前にいるコイツがやっていなくて。
俺の、翔の制服破いた奴の検討はなんとなくついている。
だけど、ソレを探すことはしたくなかった。
それだったら過去を消滅させたかった。
制服は無くてもちゃんと思い出は残ってるって分かったから。
だけど・・・やっぱ理性の箍はぶっとんだな。
今回がいい教訓だ。
気をつけよう。
「ぼ・・・僕・・・。」
俺が心の中でうんうん、頷いてれば可奈人は先ほどよりももっと真っ赤な顔で立ち上がった。
「僕、齋藤君の事が好きなんです!!」
「・・・・・・は?」
:::::::::::::
俺の事が・・・・・・好き?
「で・・・でも・・・齋藤君は他に色々な人から好意をもたれているし・・・僕を好きになってもらえるなんて思ってもないんですが・・・むしろ嫌って・・・」
「ちょ・・・ちょっと待った・・・。」
え?何事なの?
俺を好き?それって・・・
「友達になりたいって事なのか?」
「いいえ、恋人になりたいんです。」
恋人。
こいびと。
コイビト。
・・・・・・・・・・・・。
そうだった。
此処はホモの巣窟だった。
食うか食われるかのサバンナも少し経験したのに何で忘れてんだよ俺!
「えーっと・・・お前も俺も男って事は知ってるんだよな?」
「はい。」
そう返事をした可奈人の眼は真剣そのもの。
冗談なんかじゃないんだ。
少し嫌がらせなのか?ともおもったけどそんな事じゃないみたいだ。
はぐらかす事なんか出来ない。
「俺・・・人は好きになれない。愛とか・・・ダメなんだ。」
チリリと喉の奥に熱い痛み。
「・・・・・・・・・。」
「だけど、ちゃんと考えるから。だから今すぐは返事できない。」
「・・・っ・・・。」
「え?ごめん!!俺・・・何か不味いこと言ったか?」
可奈人の頬に流れた一筋の涙は重力に従って下におちた。
「僕・・・齋藤君に嫌われたって・・・おも・・・。」
「人から好きだって言われて嫌いになる奴なんていねーって。」
「だけど君は気持ち悪いと思うかもって・・・。」
ゴシゴシ擦る眼は赤いままだ。
「まー。それだけは俺も似たような環境で過ごしてきたから。」
「僕・・・齋藤君を好きでもいいですか?」
「・・・・・・齋藤君っていうのやめねぇ?亮でいい。亮で。そしたらいい。」
齋藤君なんて呼ばれなれない。
「亮・・・くん?」
ポッポッと赤くなりながら俺の名前を呼ぶものだからこっちが恥ずかしくてかなわない。
俺は残りのアイスコーヒーを勢いよく飲んで立ち上がった。
「よし、出ようぜ可奈人。そろそろ自由時間終わるだろ?」
「はいっ!!」
ギラつく太陽は変わらぬまま。
二つの影は砂に映し出された。
:::::::::::::
「お前等、何処に行ってた?」
戻ってみれば些かやつれた感が漂う会長。
おそらくファン達の相手でもしていたのであろう。
それとも俺等を探していたとか?
「茶飲んでました。」
俺はあっさりそう答えて砂を蹴った。
可奈人と話していた時間は意外と長かったようで周りには殆ど人がいなくなっていた。
会長は俺と可奈人が一緒に来たことに少なからず何かを感じとったらしく口元がニヤニヤしている。
その顔を冷ややかな視線で流す。
「お前、何意識してんの?」
グイッと会長は俺の前に出て覗き込むように状態を屈めた。
「げ。」
俺は一歩遠のいてすかさず可奈人を前に出す。
「さい・・・亮くんっ。」
困ったような可奈人の声がするが使用がない。
「かいちょーは変態だから離れさせてもらいます。」
人にあんな事しておいてやすやす近づいてもらっては危ない。
何故か口元に眼がいってしまう視線を慌ててそらして可奈人の後ろに隠れた。
「顔、あけーけど?もしかして初めてだったとか?」
「ちげーし!」
ちゅうなら杏那ちゃんと毎日してますので。
あ。ほっぺですがね。
「え?違うんですか?」
「は?」
可奈人が驚いたという顔で振り向く。
「誰としたんだよ?」
会長の後ろのオーラが黒に変わりました。
「い・・・いや・・・。」
二人に迫られて思わず後ずさり。
「明星の奴か?」
「本当に・・・初めてじゃなかったんですか?」
「そ・・・それは・・・。」
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅