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RED+DATE+BOOK04

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え?つーか何当たり前の顔してんの?

「おはよう。」

「春・・・お前もなんだ?」

春の前にも大きなトランクが2つ。

周りを見てみても一人当たりトランク2個か3個ってのはどういうことなんですか?

だって二泊三日だよ。


:::::::::


「なんでお前等そんなに荷物いっぺーあんの?」

持ちきれんの?

「へ?あ・・・亮、あのね林間学校ってねいつも凄くいい場所なんだ。」

「それで?」

「二泊三日じゃ足りないからってそのまま一週間くらい滞在する人が多いんだ。だから。」

「一週間!!?待てよ学校は・・・・・・って夏休みか!!?」

「そう!」

そうか忘れてた!

林間学校終わればそのまま夏休み突入じゃんか!!

「へ〜。一週間ね〜。あれ?春、部活は?」

「もちろん行く。俺のトランクの片方は枕。」

「まくら?」

あ。あれですか。

枕替わると眠れなくなっちゃうってやつですか。

それにしても二泊三日でトランク1個っつーのも大げさな感じはするんだけどな。

まぁ、ここで俺の常識通そうってのも無理な話だし。

「亮の荷物は少ないんだね?」

「まぁな。」

俺は一庶民なんでいらないのですよ。

「で?まだ行き先は知らされねぇのか?」

「そろそろ集合時間だし・・・連絡があると思うんだけど。」

『はーい。皆さんおはようございまーす。』

丁度良く校舎に響くわたる声。

音源を見てみればエントランスホールの二階・・・丁度アーチになっている所に人影が。

きゃぁきゃぁ言っているギャラリーから察するに生徒会か!!

そうだあの紫の髪や銀色は見間違えようがない!!

・・・とそれにドレッド・・・とか・・・はれ?あの日本人形な人は女の人?

うわ・・・。生徒会って個性強すぎ。

「何かすげーのな・・・生徒会って。」

「うん。皆凄い人ばかりだよ。」

ええ。本当ですね。

あ。でも普通の人もやっぱいんだな。

会長の後ろでニコニコしてる人なんかめっちゃ親近感がわく。

「亮、会長の後ろにいる人は『京様派』だから気をつけて。」

こそっと春が耳打ちする。

親近感はわかないほうがいいらしい。


:::::::::::::


「『京様派』ってーのはお前等でいう親衛隊?」

「そう。生徒会はほぼ全員、親衛隊がいるんだ。だけどあの会長の後ろにいる人は和泉先輩って言うんだけど『京様派』だから『和泉派』も『京様派』になってるんだ。」

「へー。桜先輩みたいな人なんだな。」

「え?桜先輩?」

「そう。俺達は名称が色だったんだけど。桜先輩は俺の色『翠』の隊長。だけど『桜』の第一人者なんだ。」

「桜先輩だって人気はあるんでしょ?」

「うん。学校一。」

「って事は・・・。」

『そこ!俺様の話を聞かないつもりか?』

ビクッと楓と二人で肩をはねさせる。

恐る恐る顔を上げた先は極悪顔で微笑む会長だ。

「この続きは後でな。」

俯いて苦笑いしながら会長の話に耳を傾ける。

『今回の林間学校は海だ!』

海ですか!!

つーか林間って森じゃねーの?

いいの海で?

『これからの日程は移動中に渡された冊子を見ろ。それ通り動かねぇと置いてくかんな!』

会長はそれだけ言うとマイクを他の役員に投げ捨て背をむけた。

『はい!じゃー1年生からジェット機に乗り込んでくださいね〜!体調が悪いとか、何かトラブルがあったら直ぐに添乗員さんに伝えてください。では、移動開始!!』

皆、御付の者に荷物を持たせながらワラワラと出口に向かう。

「楓!!移動はジェット機って・・・。」

「うん。そうみたいだね。」

そうみたいってそれでいいのか!?

「どうしたの亮?」

「いや・・・なんでもない。」

そうだ、此処で俺の常識を通そうなんて話が無理なのだ。

分かってはいるけど・・・。

「すっげー・・・。」

ジェット機の中はさながらどっかの高級ホテルのスイートルームみたいだ。

いや、スイートルームにすら入ったことなんてないからテレビとか雑誌とかで見た知識だけだけど。

「離陸と着陸はシートベルトして。」

そう言いながら俺の腰にベルトを巻いてくれるのは春。

「あ・・・ありがと。」

俺はバクバク言う心臓を感じながらジッと窓の外を見た。

「う・・・わぁ!!!!」

齋藤亮、齢16歳!

人生初で空を飛びました!!!





すっげぇ!!段々人とか建物が小さくなっていって・・・。

「雲が下に・・・。」

いつも見上げている白い雲が今はこんなに近くに。

「感動・・・した。」

ポツンと零した言葉にポンポン肩を叩かれる。

「はれ?」

叩かれた方を見てみれば春、その後ろにはプルプルしてるクラスメート達。

「な・・・なに?」

と零した瞬間に笑いの渦。

「な…なんだよ?」

「亮、飛行機は初めて?」

「うん。」

素直にコクリと頷くと春はなんだか嬉しそうに俺の頭をなでる。

「は?」

訳がわからなくて楓を仰ぎ見れば笑った後らしく少し頬を赤くしている。

俺の視線に気づいた楓は少し困った笑顔で俺のシートベルトをはずしてくれた。

「あのね、亮の反応があまりにも新鮮だったんだ。」

「新鮮…。」

「気を悪くしないでね…あの…。」

そういう事ね。

これはちょっと馬鹿にされました?

「俺、飛行機にすら乗ったことないんですよ。」

妙な敬語に周りの空気が固まる。

飛行機どころか新幹線だって記憶の中では修学旅行だけですし。

「あの…。」

「住んでた世界が違うって事だろ?」

少しムカついて口調を荒げてしまった。

「違くて…。」

「俺の反応…そんなに面白かった?」

困った顔の楓とクラスメート。

あんなに爆笑してて面白くなかったって事はねぇよな。

「亮、違う。」

春が首を振って正そうとするが逆にそれが気にくわなかった。

でも、なんで俺こんなにイラついてんの?

「いいよ。」

わからない自分の心境に少なからず動揺を覚えてさっさとこの話題を断ち切りたかった。

それなのに俺は自分でも驚くほどサラッと言ってはいけない事を言ったのだ。

心にもなかった事を。

「俺とお前等は違うから。」

一瞬にして場の空気が変わってしまった。

「あ…。」

俺は自分の口に手を当てて今言った言葉を自分の中で反芻させた。

俺とお前等は違うから

確かに俺の口から出た言葉だった。

とっさに何か言わなくちゃと思ったのに。

「そうだね。」

なんていう楓の言葉が降ってきたから何も言えなくなってしまった。

否定しない。

俺はそのまま黙って俯いていた。

そして楓が俺から離れていく気配がした。

だけど俺は動けなかった、俯いたまま自分の拳だけ見つめていた。

だから楓が、みんながどれほど傷ついた顔してたなんて知らなかったんだ。






転校して一番最初に友達になったのは楓だった。

次に出会ったのは春。

そして純平とかクラスメートとか。

だけどこの学校は名家とかお金持ちだとか、俺が行ってた学校とは違っていた。

いや、むしろ生活からして違っていたって言った方が早い。
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅