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RED+DATE+BOOK04

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この動作・・・わざわざいいって言ってるのにその度、桐生さんは困った顔をして微笑むばかりだ。

俺の送り迎えなんてのも仕事のうちにはいっちゃっているのだろうか?

「じゃーな。春!また明日!!」

「うん。おやすみ。」

夜の町を車は走り出す。

「なー。桐生さんは林間学校何処行ったの?」

「林間学校・・・もうそんな時期ですか??」

「うん!つーか来週?」

「私は軽井沢でしたよ。」

「かるいざわ?」

軽井沢って・・・。

お金持ちの避暑地?

「な・・・何したりしたの?」

「そうですね・・・。乗馬をしたりしましが。」

乗馬?

・・・・・・。

そうか此処は金持ち学校!!

やる事もセレブかよ!!

まてよ・・・じゃあ俺は林間学校行けんのか?

途中編入って金とかどうなんの??

どんくらいかかんの!!?




「大丈夫よ。」

家に着いておふくろに内容を話すとにこりと微笑んでこういわれた。

「大丈夫って・・・。」

「亮ちゃん此処に住んでてそんな心配するのね?」

そりゃあ・・・此処がどんだけ金持ちかって言うのはわかる。

うん。

わかるけどさ。

「でも・・・」

「もう心配しなくていいのよ。」

そう言っておふくろは俺の頭を撫でた。

「餓鬼じゃねーんだから。」

「あら。ママからしてみればずっとガキでしょ?」

自分の所ママって言う方がよっぽどありえねぇ。

「それより、試験は大丈夫なの?赤点があると行けないんでしょ?」

「・・・多分大丈夫。」

絶対とは言えませんが十中八九大丈夫だとは思う。

大丈夫・・・だと・・・。


「・・・・・・。」

紙切れの成績表に左から右に目を巡らせて1秒。

肩の力を一気に抜いた。

「亮・・・大丈夫?」

「セーーーーフ!!!」

赤点無し!!!

俺頑張りました!!!!

「行ける!!一緒に行けるよ楓!」

「そうかー。良かったな齋藤。」

担任の柏木が俺に向かって告げる。

「もちろん楓と春もいけんだろ?」

と、聞くと二人とも頷いた。

「草、青木と綾瀬は頭いいぞ。」

俺の後ろを通り過ぎてじゅんペーが呟いていく。

「え?そうなの?つーかお前は行けんの?」

「馬鹿にすんなっつーの。」

どうやらじゅんぺーも赤点はないみたいだ。

失礼だけどぶっちゃけ意外。

「静かにしろー。今回このクラスからは赤点者はいなかった。よってみんな来週には林間学校だ。忘れ物ないようにしろよ。」

柏木はニコニコと嬉しそうにクラスを見渡す。

「当日遅れたら俺に電話しろよ。では解散。」







林間学校前日、篠宮家。

「下着に服に・・・。」

要綱を見ながらクローゼットの中から服を物色していく。

隅に置いてあるダンボールはずっとあのまま放置だ。

再度中を見る覚悟はできていない。

「で、桜先輩から届いたネクタイ・・・もろもろ・・・。」

あの出来事後、直ぐに桜先輩から新しいネクタイが届いた。

そして手紙やら贈り物やら食べ物やら服やらその他色々。

一番上に置いてあった紙を見れば『翠』の文字。

「俺・・・転校したのに・・・。」

『翠』とは明星高校にいた時の俺の親衛隊の名前。

つーか色?

制服はともかく目、髪共に緑だったからこんな風になってしまったらしいのだけど。

入ってるものを一つ一つ取り出して床に並べる。

「うわー。泣きそう・・・。」


視界が滲んでくるのは悲しいとかそういう感情の物じゃない。

ぎゅっと胸を締め付けられるような感覚も決して辛い物じゃない。

手紙の宛名を一つ一つ見て浮かんでくる顔。

「・・・。」

つ、と一筋流れた涙を亮は拭わないままでいた。

「返事・・・書かなきゃ。」

亮は立ち上がって親にレターセットを貰いに行った。





「亮ちゃん忘れ物はない?」

とおふくろ。

「薬はもったのかい?」

とじーちゃん。

「気をつけてねぇ。」

とばーちゃん。

そして

「いいか亮、危なくなったらすぐ110番に電話するんだぞ。」

と親父。

玄関で家族全員、俺の鞄を覗き込みながら思いついたことを言う。

「大丈夫!全部昨日の内に準備したよ。」

結構大きい旅行鞄だが『ちょこん』という音が相応しいのはやはりこの家が、というよりむしろ玄関が相当デカイからだと確信している。

肩にいつも学校に持って行ってるスポーツバックをかけて靴を履く。

「杏那、俺がいない間元気にしててな。」

おふくろの腕にいる妹の杏那に指を近づけると小さな手できゅっと握り緊めた。

にこりと笑う様は天使だ。

キューピットだ。

はっきり言って

めっちゃ可愛い!!!

まだ1歳にも満たない杏那は俺みたいに緑の眼はしていない。

只、おふくろや俺の純黒の髪ではなく親父に似て少し髪が薄茶だった。

「行ってくんね。」

名残惜しみながらも指を引き抜くと途端に顔は歪められる。

「あ〜。泣くなって・・・!!」

慌てて杏那のご機嫌を取ろうとするがそれはおふくろに阻められた。

「桐生さん待たせてるんだからさっさと行きなさいね。」

ふえふえ・・・と今にも泣いちゃうよオーラを出している杏那を放っておく事などはしたくないのだが此処は涙を飲んで我慢だ。

「じゃ・・・行ってきます!!」

旅行鞄を手で持ち俺は篠宮家の玄関を出た。





そう!今日は林間学校!!!











「亮君、おはようございます。」

「おはよ!桐生さん!」

車に乗り込み学校までの道のりを送ってもらう。

今日はいつもより1時間ほど早いのだが桐生さんはピシッとスーツできめていた。

「亮君、林間学校楽しんできてくださいね。」

「うん。今から楽しみ!」

まぁ・・・かいちょーと同じ班ってのがちょっと問題だけどな。

「ですが、気をつけてくださいね。」

「ん。薬は持ったし、いくら美味いもん出ても食いすぎないようにはするよ。」

「いえ・・・そうではなく・・・。」

「・・・あー・・・もしかして・・・。」

もしかして・・・

俺が体育倉庫でピンチになった事とか?

あ。でもあの事は誰にも言ってねぇんだけどな。

純平も言ってないと思うし。

「えっと・・・俺も男だし、なるべく友達と離れないようにするしさ!!」

「ええ、できれば青木君や綾瀬君方と一緒にいてください。」

「うん!!」



とは言っても春と楓とは班違うし・・・。

むしろ凶悪な危険人物と一緒です。



車から降りて荷物を持ってくれるという桐生さんの有り難い申し出を丁重に断って集合場所のエントランスホールに向かった。

わぁ。みんなどんだけ持ってくの?

着いた俺は入る前に固まる。

だだだだ・・・だってさ馬鹿でけぇホールがトランクやらトランクやらトランクで埋め尽くされてますよ!!

何なのこの量は!?

「あ!!亮〜!!おはよう!!」

俺を呼ぶ楓の声が聞こえるからそちらを見てみればぴょんぴょん跳ねて手を振っている彼が。

可愛い!!

じゃなくて・・・

「楓・・・もしかしてこのトランク2つも持ってくの?」

「え?うん。」
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅