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RED+DATE+BOOK04

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「アホ・・・言うな。お前だってこんな事してたら馬鹿を見るよ。」

グスッと鼻をすすってそういった。

「俺、利用するって言った。だから・・・」

だからそうなる前に突き放して欲しい。

優しくしないで欲しい。

それなのにこの暖かい腕の中は悲しいほど心が安らぐ。

矛盾、欲しいって願っちゃいけないのに俺には必要なもの。

けど、まだ俺は大丈夫。

自分からは離れられなくなっているのに大丈夫なんて当てはまらないのかもしれないけど。

「黙ってろ。」

それなのに純平はもっと力を入れて俺を抱きしめる。

俺が思っているのとまったく逆の事をする。

「純平は俺を好きにならないよね?」

人に漬け込んでおいてよくこんな事言える。

でもこれだけは重要。

その言葉に純平はピクと肩を揺らした。

「愛してるなんて言わないよな?」

答えはNOであるようにそう聞いた。

だから純平は

優しい人は

俺の欲しい答えをくれる。

「いわねーから黙って泣いてろ。」

ごめん。

手を、純平の背中に回してギュってシャツを握り緊めて、顔を押し付けた。

心の中でごめんなさいを沢山言って。

俺は泣きたいだけ泣いた。








「え・・・っと・・・。」

ぐすぐす言う鼻を啜りながらゆっくりと純平から顔を離した。

ようやく落ち着いた感情はざわめきも苦しみさえなくなっていた。

人の心音と体温は驚くほどの精神安定剤だった。

純平はずっと撫でてくれた手を緩めて、もう一度髪の中に指を埋めた。

「ばーか。」

振動して聞こえる声。

「どうせ馬鹿ですよー。」

湿ってしまった純平のシャツ。

顔を上げると物凄く笑顔な純平と眼が合ってしまった。

「っっ!!!」

慌てて下を向く。

恥ずかしいっっ!!!

ああああ!!!恥ずかしい!!

「す・・・すんません。」

一応謝ってみました。

そしたら

「っ・・・あはははは!!!」

超笑われました。

「わ、笑うか普通・・・!?」

「だってお前・・・ゆでだこみてぇ!!」

っっ!!

こいつッッ!!!

「わっ冷てっ!」

もう氷が水になってしまった袋を顔に押し付けられた。

「眼の腫れ・・・引かないかもな。」

「ん・・・。」

「序に顔も冷やせよ。」

ぷぷって唇の隙間から空気漏れてますよ純平くん。

「洗ってきます。バスルーム貸して下さい。」

ソファーから立ち上がって一歩、歩く。

そして一つの疑問点を感じた。

「そういや・・・お前の同室者は?」

「それなら・・・あ。」

何かを思いついたような顔になった純平。

パッてひらめいた様な顔になった彼。

「あ?」

俺は首を傾げてみた。


:::::::::::::



「で?何ひらめいたのじゅんぺー?」

洗面所で顔を洗ってきました。

眼は、あはは、と乾いた笑いが出るくらい赤くなっていた。

純平は考えるように携帯を見ている。

「・・・いや、お前あのメールの差出人知りたい?」

「え?」

「っとその前に目薬。上向け。」

え?純平が点してくれるの?

「なんかじゅんぺってお母さんみたいだな!」

「は?」

「お母さんは甘い匂いで優しいんだろ?じゅんぺは甘い匂いだし、優しいし!」

あれ?卵焼きの匂いだっけ?

シャボン玉の匂いだっけ?

「お前・・・本当に・・・。」

何か言いたそうにしてるけど俺は眼を瞑って上を向いた。

「よろしく。」

「・・・眼瞑ってたら点せないけど。」

「だって怖いし。」

「あけろ。」

「っ!」

空けた瞬間爽快感。

「もう一回。」

くぁ!これクールだな!

数回瞬きして眼に馴染ませれば心なしか眼の腫れも引いたような感じがした。

「差出人が分かるって?」

潔くもとの会話に戻る。

「ああ。分からないこともない・・・と思う。」

歯切れの悪い返答に首を傾げる。

俺としては・・・分かった方がいいんだけど・・・でも・・・

「でも、分かったからってもう・・・消えないだろアレ。」

ばら撒かれた物はもう回収不能だ。

俺は・・・どうしたいのか分からない。

どうしたらいいか・・・?

「そうだなでも・・・でもお前このままほって置いたらどうなるか分かってんのか?」

「どうなる?春と付き合ってるって噂される?あ!そうだよ!俺春ん所行かなくちゃ!!」

「待てよ!部屋から出んな!」

「え?」

純平はあっちゃーって顔をして眉を寄せた。

「お前、青木と話したいなら携帯使え。」

ぽいって渡されたのは純平の携帯。

「でも俺会って話したい!」

「止めとけ。」

「・・・なんで?」

純平は嫌そうな顔をして携帯を押し付けた。

「いいから電話しろ。」

「・・・自分のあるからいい。」

ポケットに手を入れて画面を見れば着信履歴が数件。

「あ・・・。」

春からだ・・・。

直ぐに春の番号に発信した。


:::::::::::::


『亮?』

媒介を通して聞こえる春の声は何か焦っているようだ。

「あ。春・・・あの・・・。」

『今どこにいる?誰かにあった?』

「じゅんぺーの所にいる・・・誰かには会ってない。」

そういえばほ、と息を吐く音が聞こえた。

「あの・・・春あの画像。」

『うん。ごめん。』

「え?待った!謝るの俺!!」

『え?』

「お・・・俺の気持ちは・・・。」

『分かってるよ。』

「え?」

『愛してるじゃない、って亮は言った。』

あ。

『俺はそれでもいい。』

それでもいいって・・・。

そんな、そんなのいいはずがない。

『亮は俺の友達。大切。』

どうしてこうも。

どうして

どうして、俺を責めないのだろう。

『それでね・・・亮、』

「えあ・・・?何?」

また泣きそうになって慌てて眼を擦った。

『ごめん。』

「は?」

『また・・・迷惑かける。』

「へ?」

また?

迷惑?

また?って何?

『ごめん。』

「え?あー?うん?よく分からないけど、春を迷惑なんて思ったこと一度もねぇよ?」

そう言えば息を飲む音が聞こえた。

『うん、亮。ありがとう。』

「あ?うん?別にいいって・・・何が?」

マジわかんねぇ。

『あ・・・亮、楓が話したいって。』

『亮!亮大丈夫?』

すると直ぐに春の声から楓の声に変わる。

「あー楓?大丈夫!ってか何が大丈夫?」

『だい・・・じょうぶなんだね?よかった。』

そういや楓と春は同室か!

「うん?俺元気だよ?どうかした?」

さっきまで泣いてたなんて絶対言わないけど。

『うん。その・・・』

:::::::::::::


「お・・・?」

ぐいって手首引かれたと思ったら純平が携帯に耳をつけて一言。

「それ、俺から言っておく。お前等言いにくいだろ。」

純平は俺の顔を見ながら楓と話している。

俺はやっぱり疑問を浮かべるしかないんだけど。

「ああ。分かった。じゃあな。」

そして電話は終わったみたいだ。

画面を見れば通話終了の文字。

「何・・・事なん?」

純平を見れば深い溜め息をついた後そっぽを向いた。
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅