RED+DATE+BOOK04
嫌味ではない。そしてやましい意味も含まれてないであろう春の言葉は時にどうかえしていいのか分からなくなる。
「そうか?普通じゃね?」
ピタッと春の腕と自分の腕をくっつけてみる。
太さは違うが色は春もそんなに変わらない。
少しコンプレックスを刺激されるが自分は自分とわかっているしそれ以上に諦めが多い。
「・・・亮といると落ち着く。」
「ん。俺も。」
言葉こそ少ないが気遣ってくれる存在は心地よい。
それに春は気取った事を言わないから楽なのだ。
「だけど・・・もう出たほうがいい。」
「え?なんで?」
すいっと流れるような動きで春は湯船の外に出る。
「気づかない?」
春は亮の手をとり女性をエスコートするように優しい手つきで外に出るように促した。
「何を?」
「みんな亮を見てるよ。」
は、として周りを見回せば、なるほど自分から目をそらす者が何人か見受けられる。
あっちゃー。また噂でも流されんのかな・・・。と少し心配になりながら春と亮は脱衣所へ向かった。
「うわ・・・。もしかしてお前入ったんか?」
丁度着替えている途中で宮と聡がやってきた。
彼等はこれから入るようだ。
「いい湯でしたよ。」
亮は上半身裸で首にかけたタオルでガシガシ髪をふいた。
「お前・・・アホやな。」
宮は心底呆れた顔で亮を見た。
「なんで?」
そう聞けば宮はぐいっと腕を引いて鏡の前に立たせる。
「よう、見ろ。」
写っているのは見慣れた姿と自分の腕を掴んでいる先輩。
「これが何か?」
そういえば宮は亮の顎を鏡に向かわせた。
「上気した頬。」
そしてそのまま手を亮の頬に滑らせる。
「エロい鎖骨。」
顎から下に持っていかれそのまま鎖骨を撫でられる。
「ピンク・・・ってお前マジ?」
宮が凝視しているのは亮の胸元だ。
「何がピンク・・・って?・・・っうるせぇな!!!!ピンクじゃねーだろ!!朱鷺色だろ!!」
亮は顔をもっと真っ赤にさせながら宮の手を払いのけた。
「お前・・・ホンマに男か?腰・・・だって細すぎじゃね?」
宮は顎に手を添えながらジロジロと頭からつま先に視線を移動させる。
「ちょ・・・下も見しみてみ。」
「ふざけんな!!いくら先輩だからって・・・!!!アンタ変態かっっ!!?」
亮はハーフパンツを両手で押さえながらわなわなと震える。
「青木・・・コイツほんまについてた?」
そう春に聞けば春は黙って一回頷いた。
「春!お前もんな事答えなくていいのー!!」
「でも・・・本当に入ったのかい?お風呂。」
どうどうと宥めるようにやってきたのは部長こと福野聡。
「ぶちょーも何か文句あるんスか?」
少しぶすくれて言う亮に聡は苦笑した。
「いや・・・大変だったんじゃないかなって。」
「誰が?」
「春君とその他に入ってた人?」
疑問に半疑問で返すのは如何なものだろう。
亮はなんで俺が風呂に入るだけで(それも共同でリゾート地の)そいつらが大変なんだよ?と思った。
「春、俺迷惑かけた?」
春を見上げれば首をかしげている。
「ほら!ぶちょー!俺誰にも迷惑かけてないじゃないですか!」
「うーん・・・ま、何ともなかったから別にいっか。」
そういうと聡は自己完結してしまったのかにっこりと笑った。
「・・・春、俺時々あの人良く分からない。」
「うん。」
亮はTシャツを着ると春と共に風呂場を後にした。
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「亮、なんか飲まない?」
「飲む!」
やっぱ風呂の後は牛乳だよな!いいや!フルーツ牛乳でもいい!
なんて思ったがそれは一瞬にして思考から消えた。
豪華なシャンデリアに革張りのソファー、落ち着いた空間は腰に手をあて牛乳を飲む場所ではなかった。
それでも春はスタスタと長い足を運ばせて奥の二人がけのソファーに招いた。
亮は少々顔を引きつらせてそれにならった。
「何飲む?」
「・・・何が飲めんの?」
ハーフパンツにTシャツなんてラフな格好できていいのか?と心臓は居心地の悪さと緊張から高鳴っている。
背筋をピンと伸ばして座ってはみたもののどう見ても自分がいるべき場所ではないと感じる。
「なんでも・・・ここから選んで?」
そういって春が指差すのはノンアルコールのドリンクが書かれてるもの。
「あ。オレンジジュースがいい。」
亮は一番初めに眼に入ったものを指差した。
「じゃ、俺はミルク。」
「・・・・・・。」
みるく。
ああ。日本語で言えば牛乳ってやつですよね。
春がボーイに注文をしている間亮はあたりを見回した。
あー。あいつ等篠宮の学生だ。
くっつくように語り合っている二人に見覚えがあった。
話したことなど無かったが顔は見たことある程度のものだ。
亮は顎に手を乗せながらその二人を眺めていた。
あんなにくっついて暑くないのかねー?
まぁ、楽しそうだからいいんだけど・・・。
そんな二人はあはは、うふふと笑いながらいい雰囲気だ。
でも俺と恵もあんなんだったかな?桜先輩とかぴったりくっついてたし。
明星高校の自分の素行を振り替えでばそんなに珍しくもない。
じゃ・・・かわんねぇか。
なんて自己完結をしようとした時、その二人は見つめあった後口付けを交わした。
とたんガクンッと手から落ちる顎。
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「っ・・・。」
おいおいおいおい!!!こんな公共の場でキスなんかしてんじゃねぇよ!!
チラリと再び視線を移せば先ほどより深くなっている。
げ・・・。
男同士のキスシーン。
いやね、別にいいんだ。
だけど場所が問題だろう?
嫌なわけではないが亮は昼の出来事を思い出して思わず顔をしかめた。
「お待たせしました。」
その回想を打ち切ったのはコトンというグラスを置いた音。
「はい。亮の。」
「さんきゅ。」
亮は渡されたグラスからオレンジジュースを一口飲んで溜め息を吐いた。
「・・・春・・・はキスしたことある?」
「・・・・・・・・・・・・。」
「あー。言いたくなけりゃいい。」
それでなくても人気のある春だから無い、なんて事は無いと思うが。
只、こんな学校にいればキスとかセックスとか・・・日常茶飯事だって聞く。
明星よりも風紀が乱れているこのお坊ちゃま高校に亮がまだ慣れてないだけだ。
むしろ・・・見慣れる日が来るのか?なんて安易な考えから聞いてみた。
「ある。」
「ふーん。」
やっぱり。この歳で無いっつー方がおかしいのか?
現に俺だってあるんだしなー。
しかし亮が考えてたものより春の経験はもっと深いのだ。
「無理やり・・・押し倒された。」
「えっ!?」
無理やりって・・・
押し倒されたって・・・!!!
もしかして・・・
もしかして・・・
春って掘られた!!!?
流石に声には出なかったが顔は驚きを隠せてない。
「だ・・・大丈夫だったのか?」
「うん。俺より小さいやつだったし・・・只、唇押し付けられただけ。」
「へ・・・へぇ。」
どうやらいらぬ心配までしてしまったようだ。
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅