RED+DATE+BOOK04
自問自答した末に出たのは自分でも思ってもない言葉。
「お・・・お前等って付き合ってんの?」
「・・・・・・・・・・・・え?」
「あ。」
楓が驚いたように目を大きくするのと同時に俺も自分の口に手を持って言った。
違うだろ言う事が!!!
「ちが!!違う違う!!」
ぶんぶん手を振って自分の失言を否定する。
「そうじゃなくて・・・。」
自分の頬に手を当てればありえないくらい熱かった。
「付き合ってない・・・よ?」
「え?」
楓の言葉に顔を上げれば楓は首を傾げていた。
「ぼ・・・僕と春だよね?付き合ってないよ。」
本人からでた否定の言葉。
「えっと・・・俺、きょー様とかに言わないよ。」
「うん。」
それでも楓の答えは変わらない。
春の顔を見れば無言で頷かれた。
あれ…?でも…
「抱き合ってたよな?部屋の前で。」
「え?」
楓は少し考えた後顔を赤らめた。
「あれは楓が転びそうになったから俺が支えただけ。」
春の声が降ってくる。
支えただけ?
「そんなこったろうと思ったけど。」
宮先輩の呆れた声を耳の奥底で聴いた。
ま…よくある勘違いってやつだよね!
俺ってばお茶目さん☆
あはは………。
って笑えねぇ。
「あの…亮。」
「ん?」
「ごめんね。」
あ。俺、このために楓に会わなきゃいけなかったのに。
俺が言わなきゃならないのに。
「楓、謝ることないじゃん。俺が勝手にガキみたいに拗ねてさ…。酷い事言ったよな。ごめん。」
自分が言われて嫌な事を自分から肯定するなんて馬鹿だ。
ビクと震えた肩は直ぐに力が抜かれた。
「あの後ちょっと考えて…俺にしか出来ない事があってそれで俺も違うって言わ
れた。だけど全然意味わかんなかったんだ。」
勿論俺が楓に対して言った物は価値観とかだったわけなんだけど。
可奈人が言った事はどうも違うらしい。
「俺、なんかみんなと違う事が出来るのか?超能力とか使えねぇよ?自分て言っておいてどうかと思うけど…。俺、楓と変わらないよな?」
あの時否定して欲しかったんだ。
俺は最初から篠宮の生徒って訳じゃないから。
転校生だからっているまでもそういう訳じゃないって。
同じだって。
仲間だって。
「…りょ…う。」
顔を上げた楓は泣いていた。
「え!!?」
どうしよう!!!!
楓が泣いてるよ!!!!
うわ、コイツって泣き顔も可愛い…じゃなくて!!
「ごめっ!!楓ごめんな!!」
俺がわたわたしていると細い腕に抱きしめられた。
「か…かえで?」
うあー!!男同士で抱き合ってるはずなのに、相手は男のはずなのに凄い心臓バクバクいってんですけど!!
なんか楓いい香りがする……って俺変態みたいじゃん!!!
で…でも楓はすっげぇ可愛い顔してるし、俺より身長低いから全然イケ……。
いけねぇだろ!!!!!
「亮…ごめんね。バカにした訳じゃないんだ。」
ポツリと楓が鳴き声で話す。
「何って言ったらいいのかな?…でも、亮は僕にとって特別。」
「特別?」
「うん。宝物だよ。」
「宝物って…俺そんなに高価じゃねーけど?」
むしろ自分に値段を付けろと言われても高くはつけられない気がする。
「違うよ。亮にしか出来ないこと。亮は僕に宝物のような言葉をいっぱいくれる。ずっと欲しかった言葉…。」
「………………。」
うーん。そう言われてもな…。
何が特別なのかそんな大それた事言ったのか全然記憶にねーんだよな。
ま、楓が許してくれるっつーならいいのかな。
特別とかある意味「違う」と同じ事言われたけど多分いい意味だと思うし。
なんて考えを巡らせていたらポンと頭を撫でられた。
「どうやら、一件落着したみたいだね。」
「部長!」
その場にいたのは福野聡。
相変わらず爽やかな笑顔だ。
「よかったね、二人とも。だけど此処入り口だしみんなの邪魔になるからご飯食べながら話そうね。」
「す…すみません!」
楓は顔を真っ赤にさせてパッと俺から離れた。
「食べようぜ?飯?」
そう言えばなんとも可愛らしい顔ではにかんだんだ。
豪華な夕食を平らげデザートに差し掛かる。
出された料理はどれも絶品だったが桐生さんの味の方が美味いな・・・と頭の隅で思った。
「あー。腹いっぱい。」
軽く二人前は平らげて至極ご満悦な亮は唇についたクリームをペロと舐めて笑った。
「おいしかったですね。」
可奈人もニコリと笑って膝のナプキンをたたむ。
全員が食べ終わり各々一息を入れる。
全員とは言ってもバレー部部長副部長は違う席での食事だ。
「じゃ・・・風呂でも入ろうかな〜。」
海には入ってないが潮風にさらされた身体や髪は少しべたついている。
「亮くんもう入りますか?また湯はってませんけど。」
甲斐甲斐しく可奈人はそう告げるが亮は首を傾げて笑った。
「ああ。いいよ俺、大浴場いくし。」
「え。」
「え?」
「・・・・・・。」
上から可奈人、楓、春の反応だ。
「あるんだろ?温泉。こんだけ広いんだから風呂もでかいんだろうな!!」
ワクワクウキウキといった感じで楽しそうにしている亮は周りの様子に気づかない。
「亮くん・・・本気ですか?」
「何が?」
「その・・・大浴場に行くって・・・。」
「うん?皆はいかねぇの?」
そう言われれば可奈人と楓は困ったように顔を見合わせた。
「亮・・・僕はちょっと・・・いけないんだけど・・・。あの・・・。」
言葉を濁す楓は何と言おうかと手をこまねている。
「うん?俺も楓は行かない方がいいとおもうぜ?あと、可奈人も。部屋風呂使った方がいいと思う。」
この二人はそういう事になれてないと思うし顔が顔だ。
一見少女にしか見えない。
それに篠宮は異性に向く感情が同性に向く事実は既に知っている。
「亮は行くの?」
楓は亮もそうしたほうがいいという提案を言えないままそういう。
「うん。えーっと・・・何か問題か?」
「・・・・・・。」
黙りこむ可奈人と楓。
彼等の頭の中は同じ問題をどう説明するかで締められた。
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「亮は行かない方がいい。」と楓が言えば亮は行かないだろう。
しかしそれには本人があまり重要と思っていない説明と亮の此処で確立された地位をも説明しなければならない。
亮こそは気づいていないがくったいのない性格とふとした時に妙に色っぽい姿は既に多くの輩を虜にしている。
1-2がいい見本だ。
「亮くんの身体を誰にも見せて欲しくないです。」こう言えば亮は行かないかもしれないと可奈人は思う。
しかしこの考えはあまりにも自己中心的ではないか。
好意を持っているのは一方的だ。
だとえ気持ちを伝えたとしても、それで彼を縛ることなんて望んでいないのだ。
二人が数秒考え込んでいるうちにもう一人が軽く言ってのけた。
「じゃあ、俺も入る。」
楓はそれにほっとしたような笑みを見せた。
可奈人は少し眉を寄せた後あきらめたように息を吐いた。
「春も入んの?」
「うん。入る。」
作品名:RED+DATE+BOOK04 作家名:笹色紅