【無幻真天楼 第十四回】雨上がり
「緊那羅…」
阿修羅が緊那羅に手を伸ばす
緊那羅の手の中の宝珠の光が更に強くなり部屋を阿修羅をそして京助を照らす
強い光のはずなのにどこか柔らかく暖かい光が緊那羅の体を包み込んだ
ぴくんと緊那羅の睫毛が揺れた
「…きん…なら…?」
阿修羅が名前を呼ぶ
今度は微かに緊那羅の指が動く
ゆっくりと緊那羅の瞼が開いていった
窓の外は相変わらずざぁざぁと雨が降り続いている
誰もいない窓の外を坂田がただ見ていてその横には矜羯羅が同じように窓の外を無言で見ている
「ハルミママ…大丈夫?」
悠助が母ハルミに聞くと顔をあげずに母ハルミが頷いた
「ハルミ殿…思い出したのだな…」
迦楼羅が聞くと母ハルミが再び頷く
「思い出したのだなって…」
「竜の術で忘れていたこと…」
矜羯羅が小さく言う
「…みさ…おとかいう…?」
「…操はね…私の姉の子供でね…」
母ハルミが静かに話し始めた
「緊ちゃんとは正反対の性格で…でも京助は凄くなついていて何かあると操ちゃん操ちゃんって…」
鼻を啜った母ハルミが顔を上げた
「操も何だかんだ文句言いながらなついてくる京助をちゃんと面倒見てくれて…それこそ悠ちゃんが生まれてからは私や竜之助より京助と一緒にいてくれたんじゃないかしら…」
誰も何も言わずただ母ハルミの話を聞いている
「…でも…」
母ハルミの声が詰まった
作品名:【無幻真天楼 第十四回】雨上がり 作家名:島原あゆむ