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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十四回】雨上がり

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「なんだ? あれ」
海に入っていた子供の一人が空を指差した
数人がその指先を見る
「…ひと?」
ザザン…と岩に波がぶつかる
カモメの鳴き声が響く
青い空に浮かんでいたのは間違いなく人影
まるで階段を降りるように一歩ずつ海面に向かい空から歩いてくるその人物を声なくただ信じられないという顔で見る子供達
「なん…だ…」
操も例外ではなく目を見開きその様を見ている
「操ちゃん…」
京助が操のシャツをつかんで擦りよってきた
青い顔をして微かに震える京助
「どうした…? 京助…」
いくらありえない光景を目の前にしているからといっても尋常ではない京助の様子に操がしゃがんで京助の頬を撫でた
「わかんない…でも…でもなんか…なんか…」
泣きそうに眉を下げた京助を抱き寄せ背中をさする操にもうひとりこの辺の子じゃない子が擦りよってきた
「…大丈夫だよ」
その子も腕の中に入れ操が顔をあげる
「栄野京助君…」
目に入った二本の足
爽やかな青年の声
「あ…」
ぎゅっと二人を抱く操の腕に力が入り操がその声の主を見上げる
操の顎に手を添えて上を向かせるとにっこり微笑む
左頬に二つならんだほくろが目に入った
「清浄」
頭の上から声がした
「しょう…じょう…?」
見た事のある顔なのにきいたことの無い名前
「上…」
操の顎から手を離し軽く頭を下げる
「…しばたさん…?」
京助が小さくその名前を呼ぶとにっこりと返された微笑み
「勝美さん…? あの…」
「怪我はさせたくないからね…若の大事なお友達だから」
身をかがめ操の視線に柴田が自分の視線を合わせた
「こっちにおいで」
柴田が手を京助に向かって差し出すと操が京助をぎゅっと抱きしめ柴田を睨む
「京助に何の用なんだ」
「君には関係ないよ操君、さぁ」
ずいっと突き出された手を見て京助がひっとしゃっくりのような声を上げて操にしがみつく
「京助怖がってるからやめ…」
「まどろっこしい」
再び上から声がした
「早くしろ清浄」
操の視界に白い布が現れる
それはゆっくりと地面に降りて柴田の隣に立った
「上…もうしばらく…」
「嫌だね」
白い布から出てきた指がぱちんと鳴る
「上…!!」
柴田がはっとしてその指を掴んだ
「まどろっこしいのは…嫌いなんだよ今まで散々待った…待ちくたびれた【時】が来るのを」
柴田の手を払って白い布を纏った人物が言う
気付くとさっきまで鳴いていたカモメの姿が無い
海にいたはずの子供達の姿も
まるでこの一角だけ別の世界に放り込まれたようだった
「…おにいちゃん…きょうすけ…」
この辺りの子じゃない子が操にしがみつき半べそをかいている
「大丈夫…」
震える京助とその子を腕の中に操が柴田と白い布をまとった人物を見据え立ち上がる
「僕様に抵抗する…何の力も無いのに…宝珠も無いのに…おもしろい」
クスクスと微かに笑う白い布を纏った人物の隣で柴田が苦い顔をしていた