【無幻真天楼 第十四回】雨上がり
「し…ばた…?」
確かに窓の外に飛び出していった柴田の姿はない
柴田だけではなく慧光やゼンゴそして白い布の人物の姿もなかった
坂田が窓枠までダッシュして身を乗り出す
「柴田! おい!! どこいった!!?」
坂田が柴田を呼ぶがどこからも返事はない
「無駄だよ…結界の中には届かない…結界がなくならない限りこちらからも向こうからも…ね」
矜羯羅がぎゅっと手を握りしめ窓の外を見る
「なぁ…あいつ…何なんだ? 誰なんだよ…」
中島が立ち上がって聞く
ざぁざぁという雨の音だけが響く沈黙
誰も口を開こうとしなかった
「…ハルミママ…?」
悠助が母ハルミを呼ぶ声に一同が視線を向ける
柴田の背広を肩にかけ烏倶婆迦と悠助を抱き締めたまま肩を震わせる母ハルミ
「…ハルミさん…?」
南が母ハルミに近づいて背中を撫でた
途端咳き込んで母ハルミが嗚咽をあげ始める
「ハルミ…? どうしたのハルミ…?」
烏倶婆迦が腕を伸ばして母ハルミの頭を抱き締めた
「…っ…ごめんなさいね…ごめん…」
烏倶婆迦と悠助を更に抱き締めて母ハルミが謝る
「どうしたのハルミママ…?」
悠助も泣きそうな声で聞く
「…ルミママさん…」
制多迦がしゃがんで三人いっぺんに抱き締める
「…っ」
矜羯羅の顔が悔しそうに歪んだ
作品名:【無幻真天楼 第十四回】雨上がり 作家名:島原あゆむ