小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【無幻真天楼 第十四回】雨上がり

INDEX|26ページ/27ページ|

次のページ前のページ
 

「ほやぁああああ!!!」
ちみっこ竜の寝ていた部屋にやってきた母ハルミが泣き叫ぶちみっこ竜の横に座り込んだ
「竜之助…どうしよう私…っ」
座り込んだ母ハルミがまるで少女のような口調で泣き喚くちみっこ竜に話しかける
「私ッ…自分の子供すら守れないの? 操が守ってくれたの京助を竜之助が守ってくれたの私もこの町もでも私は…なに…も…」
流れる涙を拭うことなく母ハルミが泣きながらちみっこ竜の寝ている布団に突っ伏して嗚咽をあげる
「ほやぁあああああ!!!」
母ハルミにつられたのかちみこ竜の泣き声もまた大きくなった
「竜之助…どうしよう…どうし…っ」
泣き崩れた母ハルミの耳に聞こえた何かを引きずる音
ゴトゴトと鉢を引きずって現れたのは夏の妖精
「ハルミママ様」
「…ヒマ子さん…?」
泣き顔を上げた母ハルミの涙をヒマ子が葉で拭うとにっこりと笑った
「大丈夫ですわハルミママ様…」
「え…?」

パラパラと崩れた瓦礫を制多迦が跳ね除けると矜羯羅が立ち上がってひとつ咳をすると口の端から血が流れた
「弱い」
帝羅が指を唇に当てて周りをぐるりと見渡す
犬の姿に戻ったゼンゴ…コマとイヌをその腕に抱いた乾闥婆をかばい羽を大きく広げた迦楼羅が帝羅を黙って睨む
坂田に抱き起こされて慧光に治癒を受けている柴田こと清浄
肩を押さえて立ち膝で帝羅を長い前髪の間から睨む阿修羅
それらを一通り流し見た後帝羅がフンと鼻で笑った
「僕様は絶対…それをわかっててこんなことするから」
くるっと一回転した帝羅の姿が元の少年の姿になると白い布を靡かせて制多迦に近づく
「…に」
いつもの半開きの目を少し鋭くして制多迦が帝羅を見下ろすと帝羅の手が制多迦のあごをつかんだ
「制多迦!!」
矜羯羅が声を上げると帝羅が手のひらを向けその瞬間矜羯羅の体が吹き飛ぶ
「…んがらッ!!」
制多迦が帝羅の手を払いのけて矜羯羅の元に走る
「制多迦、お前も僕様のものだ」
うっすら笑みを浮かべて矜羯羅を抱き起こす制多迦を見る帝羅
気を失っている矜羯羅を抱きしめて制多迦がいつもの矜羯羅以上の鋭い目つきで帝羅を睨む
生ぬるい風が帝羅の白い布と制多迦の黒い布を揺らした
制多迦と帝羅の睨み合いが続く
先に行動を起こしたのは帝羅だった
しかしそれは攻撃でも防御でもなくてただ眉間にしわを寄せて面白くなさそうな顔を作っただけで
「…この…感じは…」
迦楼羅がハッとして辺りを見渡す
コマとイヌを抱えたままの乾闥婆がそんな迦楼羅を見てきょとんとしている
「…迦楼羅…? どうかしたんですか?この感じって…何か…」
「…いやでも…まさか…だとしたら誰が…」
聞いた乾闥婆には答えずブツブツと言う迦楼羅に首をかしげた乾闥婆
「…!」
制多迦も何かに気づいたのか顔を上げて迦楼羅同様辺りを見渡す
制多迦の腕の中の矜羯羅はまだぐったりとしたままだった
「…かるらん」
「…間違いない…しかし一体誰が…」
ずるずると体を引きずるように阿修羅が迦楼羅と乾闥婆の元にやってきた
「この感じは間違いない…竜…」
迦楼羅が小さく口にしたその名前に乾闥婆が大きな目をさらに大きくして辺りを見渡す
しかし迦楼羅が口にした名の主の姿はどこにも無く
代わりに目に入ったのはまだ治癒行為を必死に続けている慧光の姿
ハッとして乾闥婆が二匹を抱えたまま慧光の元に駆けていった