【無幻真天楼 第十四回】雨上がり
「ほう…やっぱり竜の子供…というわけか…あくまで上に反する…と」
弧を描いた唇に指を添えて指徳がにぃっと笑う
「うるせー!! 父さんがどうこうしたからとかじゃねぇし、俺は俺だし」
京助がフンっと鼻息を荒くして言う
「僕も!! 慧喜を守りたいっ!!」
悠助も京助に負けないくらいの鼻息を鼻から出した
「俺は俺なりに俺の守りたいと思ったモンを守りたいってん」
京助と悠助の足元に集まりだしていた風が一気に巻き上がる
そして
「おぉ; 爬虫類再び!!;」
ぐんっと二人の背中にいつしか現れたあの竜の羽が再び現れた
「おやおや…一丁前に」
指徳の眉毛がピクっと動き一歩後退する
「京助…」
緊那羅が不安げな表情で京助の名前を呼ぶと聞こえたのか京助が振り向きヘッと口の端をあげて笑う
その顔を見た緊那羅の表情がほころんだ
そして京助もそんな緊那羅の顔を見て笑顔を作るとまた指徳の方を向き指徳を睨む
「…アイコンタクトとかいうヤツ? 今の」
「…相思相愛ってやつ? 今の」
「そうだと思う」
南と中島が京助と緊那羅の行動を見てつぶやくと鳥倶婆迦がそれに相槌を打つ
「こんなトコだけどしょっぱいなぁ…;」
「いいんじゃない? 笑顔を作れることはすごいことだもん」
「まぁ…そうかもだけど;」
くいっとお面を引っ張って鳥倶婆迦が少し寂しそうに言った
「おいちゃんも…笑顔作りたいな」
「ばか…?」
ボソッとこぼれた鳥倶婆迦の呟きが聞こえた中島が鳥倶婆迦の頭に手を置き撫でる
「安心しろお前のお面バッチリ笑えるからさ」
「本当?」
「バチコイだ」
笑いながら中島が言うと鳥倶婆迦が嬉しそうに帽子を直した
「そうだな笑顔を作れるってのは…すごいことだな」
そんな大きな声ではないのにその場にいる全員に聞こえたその声
弧を描いていた指徳の唇
それがぎりっとゆがんだ
「ずいぶんと派手に家、壊してくれたな」
ギシっと鳴った廊下にだんだんと近づいてくる声
振り返った緊那羅が目を丸くして驚き口をパクパクさせる
「俺はさっき笑顔を守ってくれと頼まれた」
南と中島も驚いた表情のまま固まっている
まだその声に背中を向けたままの京助と悠助
さきに悠助のほうが振り返り声の主を見上げた
振り返るに振り返られないでいた京助の頭に乗せられた手
「お前は幸せ者だな京助、父さん嬉しいぞ」
「おとうさん…?」
悠助が見上げると竜がにっこりと笑った
「竜…? なんで? おいちゃんの計算では…」
鳥倶婆迦もお面でわからないがきっと驚いているんだろう少し戸惑っている声を発しながら竜を見る
「…竜…」
指徳の表情が険悪になって竜を睨んだ
「ちゃんと悠助守ったんだなえらいぞ京助」
「…まぁな」
ぐりぐりと京助の頭を撫でる竜に京助が振り返らずに答える
「じゃぁ今度は俺と悠助と京助で俺たちの守りたいもの守ってみないか?」
悠助を片手でひょいと抱きかかえた竜
「うんっ!!」
竜の言葉に悠助が首が吹っ飛ぶんじゃないかって位強くうなずいた
「京助は?」
「…まぁ…協力してやんよ」
京助が頭を撫でていた竜の手をつかんで竜を見上げるとヘッと口の端をあげた
作品名:【無幻真天楼 第十四回】雨上がり 作家名:島原あゆむ