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島原あゆむ
島原あゆむ
novelistID. 27645
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【無幻真天楼 第十四回】雨上がり

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「京助…ふぅん…へーぇ…」
その京助から視線を話すときょろきょろ何かを探し始める帝羅
「操」
その帝羅の口から発せられた名前に部屋の真ん中にいた緊那羅が驚き目を見開く
「どこにいる?」
「いねぇよ」
「嘘言うな」
「嘘じゃねぇってん;」
京助の返事にむっとした顔をする帝羅が窓へと近づく
「お前の隣にいたじゃないか」
「今はいねぇんだよ…もういねぇってんだろ!! てめぇが殺したんだっつーの!!!」
怒鳴る京助
「操は僕様のものだ」
「は・な・し・を・聞けッ!!」
迦楼羅と乾闥婆が帝羅の前に立ちふさがった
「弱いくせに」

ゴゥッ!!!

さっきの阿修羅と同じ様に帝羅が指を動かしただけで迦楼羅と乾闥婆が吹き飛ぶ
鳥倶婆迦が京助を引っ張り矜羯羅と制多迦が窓の前に立った
南を中島も京助のそばに集まり窓の外を見る
「操は僕様のものなんだ」
「人は誰かのものなんかじゃねぇんだよッ!!」
京助が再び怒鳴ると緊那羅が京助の服をつかんだ
「京助…」
「お前は緊那羅だっちゃ」
何か言おうとした緊那羅の言葉より先に京助が緊那羅の真似をしてその言葉をとめる
「どいてよ二人とも」
「嫌だね」
制多迦が頷く
「…げてッ!!」
制多迦の声に鳥倶婆迦が京助の手を引っ張って駆け出した
南と中島も緊那羅と悠助を連れて後に続く

ドォン!!!

茶の間から出て玄関に着いたとき聞こえた爆音
「いいから早く」
立ち止まった京助を鳥倶婆迦が押して外に出る
「片付け手伝ってやるから今は逃げるが勝ちだ京助ッ;」
「お前に言われると逆に断りたくなるわッ;」
手伝うといった南の言葉に京助が突っ込む
「ブッ;」
いきなり立ち止まった中島に京助がそして南がぶつかった
「な…!!」
中島と言おうとしたのかそれとも何してんだといおうとしたのか
どちらにせよ京助が声を発した
「…慧喜…」
しかし京助のその言葉は緊那羅の言葉で止まったまま視線だけが中島の向こうへと向けられる
小雨もやんだ暗闇の中で生ぬるい風になびくのは薄紫色の布
「慧喜!!」
慧喜の姿を見るなり悠助がぱぁっと笑顔になって駆け出そうとした
「悠助!!」
それを緊那羅が腕をつかんで止める
「緊ちゃん? どうしたの? 慧喜だよ? 帰ってきたから僕お帰りって…」
「悠助」
慧喜が一歩踏み出して両手を広げた
「悠助…俺ね…寂しかったんだよ…」
「え…き…」
慧喜が一歩近づくたびに京助たちが一歩下がる
それを三回くらい繰り返しているとまた茶の間から爆音が聞こえた
鳥倶婆迦が振り返る
「俺…ねぇ悠助…義兄様が憎いんだよ」
「は?;」
中島の後ろで京助が驚くと一斉に京助に視線が集中する
「だから…義兄様いらない」
「慧喜!!!」
いつの間にか慧喜の手に握られていた三又の鉤を振るとフォンと風が鳴いた
「だめ!! 慧喜ッ!! だめだよッ!!」
「悠助!! だめだっちゃッ;」
緊那羅の手を振り解こうとする悠助を緊那羅が抱き上げる
じたばたと暴れる悠助
「指徳でしょ」
鳥倶婆迦が言うと慧喜がうつむきがくんと膝を付いた