【無幻真天楼 第十四回】雨上がり
メキメキメキメキ…
再び聞こえた音
頭の布を絞りながら立ち上がった矜羯羅が乾闥婆を見ると乾闥婆が無言で腕を下へと振る
すると窓の外にあった水の壁が消えた
すんすんと制多迦に抱かれて泣く悠助の頭を矜羯羅がなでると悠助が矜羯羅に抱きついた
「悠助、別に僕は帰ってこないっていってないよ…? ちょっと慧光としょ…慧光たちを迎えにいくだけ」
「本当だな」
京助が矜羯羅にずいっと迫って聞く
「本当に帰ってくるんだな本当の本当だな?」
「…」
「嘘ついたら針、千本なんだからな」
「京助…」
かすかに震えている京助の声に緊那羅が京助に歩み寄った
「俺だって馬鹿だけどわかる、やばいってことくらいわかる…お前より強いんだろ? 父さんより強いんだろ…操ちゃん、殺した奴なんだろ?」
京助の肩に伸ばされかけていた緊那羅の手が止まって緊那羅がうつむく
しん…となった茶の間にはしとしとという小雨の音さえ大きく聞こえる
メキメキメキ…
「…なぁ」
中島がハイと手を上げる
「この音ってなんなんだ? さっきからメキメキ…」
「結界が壊れる音だよ」
「ほー…そうなんか」
鳥倶婆迦が答えた
「誰が壊してるんだろうなぁご苦労様な…」
「しまった!!;」
南の言葉の途中で迦楼羅が京助や制多迦窓の周辺にいたのを押しのけて窓から飛び出した
「っだぁッ!!!!;」
のはいいが雨でぬれていた地面で滑って転ぶ
「うわーだっせー…;」
窓の下を見た京助が呟く
「何やってるんですかまったく…っ;」
「しかたないだろう!!;」
迦楼羅の後に続いた乾闥婆がしりもちをついていた迦楼羅をひっぱってたたせた
「鳥さんって格好つけても格好つけられないタイプだよね」
「あ、いえてるいえてる」
南と坂田がハッハと笑う
「やかましいッ!!; たわけッ!!;」
ゴゥと迦楼羅の口から炎が出されると乾闥婆がすかさずけるらの前髪を引っ張った
「それどころではないでしょう」
そういって乾闥婆が向けた視線の先を京助達も見る
「…あ…」
そこにはいつものあの飄々とした雰囲気の阿修羅ではなく
「阿修羅…なのかあれ…」
京助が慧喜のいっていた言葉を思い出した
作品名:【無幻真天楼 第十四回】雨上がり 作家名:島原あゆむ